研究課題/領域番号 |
15K02380
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 浩則 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00219445)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 書簡集 / エロス |
研究実績の概要 |
今年度はLawrence Josephにより編纂されたポール・ヴァレリーとカトリーヌ・ポッジの書簡集≪La flamme et la cendre≫(Gallimard, 2006)の解読を中心とした研究を行った。この研究を通して、自己と他者のあり方をヴァレリーがどう考えたのか、他者との共同体の建設は可能なのかといった問題について考察を進めた。また、ヴァレリーがポッジとの交流をきっかけに、いかにそのエクリチュールを変更せざるを得なかったのかについても考察した。とりわけ、『魂と舞踏』、『神的ナル事柄ニツイテ』、「ナルシス断章」にはポッジの影響が見られるが、神秘主義や死に関する考察にとりわけ深化が読み取れるように思われる。これらの研究の成果は平成29年1月28日、東京大学の駒場キャンパスで行われた日本ポール・ヴァレリー研究会の例会で発表された。また、発表原稿に手を入れたものは研究会紀要『ヴァレリー研究』の第7号に掲載予定である。 他方、ポッジの詩集≪いと高き愛≫についての研究も行った。とりわけヴァレリーと関りが深い詩<Vale>に見られる隠喩などの詩法を考察した。またポッジの自伝的中編小説≪アニェス≫についても、ヴァレリーの≪テスト夫人の手紙≫と比較しつつ考察を加えた。 今年度は2度にわたって、パリのフランス国立図書館でヴァレリーとポッジの資料の収集にあたった。さらに、パリ-ソルボンヌ大学教授ミシェル・ジャルティ氏と共同で進めているヴァレリーの日記帳≪カイエ≫の校閲作業にも参加した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヴァレリーとポッジとの間で交わされた書簡集がまちがいなく二人の交流を明かす最大で最高の資料だと考えられるが、その読解も順調に進んで、いくつかの大きな論点が明らかになったし、それらに対する解決法も見えてきた。思想の共同体の問題、オルフェウス神話を中心とした神秘主義あるいは神学の問題などが主要な問題であるが、徐々に論点が整理されてきちんとした論文にまとめることができるはずである。さらにポッジの作品群についても読解が進んでいるので、そちらの方面からも考察をより深めることができるように思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度になるので、ヴァレリーとポッジの書簡集の読みをさらに徹底させるとともに、ヴァレリーとポッジの交流があった1920年代のヴァレリーの≪カイエ≫を再度確認しつつ論考をまとめていきたい。なお、平成29年度10月に東京の日仏会館で開催予定のコロックでポッジがいかにヴァレリーのエクリチュールに影響を与えたのかという点を中心とした研究発表をする予定である。また、ポッジの詩的作品を翻訳する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大学の夏休みなどの期間に学務が重なり、長期の研修旅行のための時間が取れなかったため、研修時期を年末ならびに3月期にせざるをえなかった。そのため2回とも短期の研修期間になってしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
学務のスケジュールを念頭に置きつつ、計画的に助成金を使うよう再度確認する所存である。「次年度使用額」に関しては、平成29年度分の助成金と共に主に国内外への研修旅費にあてる予定である。
|