研究課題/領域番号 |
15K02382
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
藤原 真実 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (10244401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 間テクスト性 / 妖精物語 / 17-18世紀 / 美女と野獣 / ペロー / ボーモン夫人 / レリティエ嬢 / ロベール・シャール |
研究実績の概要 |
1.論文発表:「「恋愛地図」の討論会:『とさか毛のリケ』の場合」、『人文学報』第511号、321-339頁。マドレーヌ・ド・スキュデリーが『クレリ』のなかで発表した「恋愛地図」を重要な源泉の一つとして、17世紀末から18世紀にかけてのフランスの文壇に起こった恋愛論争の表れの一つを、「とさか毛のリケ」の複数のバージョン(ベルナール嬢の『とさか毛のリケ』とペローの『とさか毛のリケ』、そしてボーモン夫人の『スピリチュエル王子』)のなかに確認した。これにより、サロンに同席した可能性のある作家間のみならず、出会うべくもない作家の作品どうしが一つの問題をめぐって応答し合っていること、また『クレリ』と「恋愛地図」に提起された恋愛論争が、世紀をまたいで多数の著作間に緊密な間テクスト性(セリー)を形成していることが明らかになった。 2.学会発表 "Le sacre commerce selon Robert Challe", ISECS 2015, Rotterdam, Erasmus University, 27 July(国際18世紀学会):ロベール・シャールの『宗教についての異議』に見出される「神聖なる通商」という語を契機に、リシャール・シモンやボシュエをはじめとする17世紀カトリック説教師らの著作と同書の緊密な間テクスト性を明らかにした。これにより、シャールの理神論が哲学書や反宗教的な著作よりはむしろ神学的著作との対話のなかで構築された可能性を指摘した。同研究は論文としてロベール・シャール学会(CELLF16-18,UMR8599)の紀要(2016年)に掲載予定。 3.17-18世紀フランス文学における「恋愛論争」の最も重要な結実であるオリジナル版『美女と野獣』(1740、本邦未訳)を日本語に翻訳した。(今年中に白水社から刊行予定。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
源泉としてのバロック小説群からトポスを抽出する作業については、『アストレ』のテクストが膨大なため、分析に予想以上の時間がかかり、現在も進行中である。実際に『アストレ』を精読してゆくと、同書が古代ギリシアからルネサンス期に書かれた恋愛論の書を多数参照して書かれたことが明らかになり、情報量の豊富さゆえに作業のスピードがますます遅くなっている。 17世紀末から18世紀にかけて書かれた妖精物語群の分析は、ペロー、ベルナール嬢、レリティエ嬢、ボーモン夫人の作品について、一定の精読と分析を行い、これまでにわかったことを論文(和文)としてまとめて発表することができた。しかしまだこれから分析すべきテクストは数多く残っている。
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今後の研究の推進方策 |
トポス抽出の作業については、引き続き『アストレ』を対象として行うほか、マドレーヌ・ド・スキュデリーの著作の分析も可能なかぎり行う。同様に、17-18世紀の妖精物語群についても、同様の作業を推進する。対象となるテクストの量が膨大なので、時間配分を工夫しながら分析作業を行う。 古代ギリシアからフランス中世、ルネサンス期にかけての恋愛論争の間テクスト性については、それぞれの領域の専門家に専門的知識の提供を依頼し、フランスから研究者を招聘して研究会を行うなどして、本研究の成果の充実をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京―パリの往復およびパリーロッテルダムの往復旅費が、早期割引で予想以上に安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、次次年度はフランスから研究者を招く予定で、その旅費の一部に充てる計画である。
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