研究課題/領域番号 |
15K02391
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
立花 英裕 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80207050)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Tropiques / Alioune Diop / セゼール演劇 |
研究実績の概要 |
今年度は、エメ・セゼールについて海外で2件の発表を行い、国内では、1件の講演を行った。また、現地での調査を3月に行った。主にマルチニック島の県立資料館で定期刊行物を中心に調査を進めた。新聞La Paix(1940年-1943年)、文芸雑誌Caravelle、共産党機関誌Action(1960年代)などの閲覧ができたことで、マルチニックの政治的・文化的状況を研究する貴重な資料が得られた。またアーノルド版のセゼール作品集を用いて作品分析を進める一方で、早稲田大学で月1回程度研究会を開き、第2次世界大戦中にセゼールが活動の拠点とした雑誌Tropiques誌を読む作業を行った。 研究成果の発表としては、5月末にセネガルで開催された国際フランコフォニー学会においてエメ・セゼールとアリウヌ・ジョプに関する発表を行った。インド洋マヨット島で開催されたシンポジウム「文学作品における島の社会的表象」では、第2次世界大戦中のセゼールの活動に関する発表を行った(学会発表の欄参照)。会場ではパリ4大学のロミュアル・フォンクワ教授に会い、2017年度に国際シンポジウムを東京で開くことについて合意を得たことも、今年度の予想外の大きな成果である。他方、日本では6月に『エメ・セゼールの演劇言語』と題した講演を日仏演劇協会の年次総会で行った。この講演は、セゼール劇を各作品に分析した上で全体を俯瞰的に捉える機会となった。同学会会報にまもなく掲載予定。 本研究は、セゼールを世界文学として捉える視点に立ち、他のフランス語圏文学・思想との比較研究を進めている。今年度は、ダニー・ラフェリエールについて国際的な雑誌にフランス語の論文を刊行した。日本ケベック学会の大会(10月)ではガストン・ミロンについて詳細な研究発表を行った。昨年度に行ったリオネル・グルーについての研究発表を論文にして、同学会の学会誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セゼールの第2次世界大戦中の活動、およびを雑誌Presence africaine中心とした研究調査は大きな成果を得ることができた。基礎研究は、もちろん足りない部分もあるが、大きく前進したと言える。しかし、長期間にあたって新聞資料を調査する作業は、膨大な時間を必要とし、かつそれを整理するにも時間を要する。今年度は3件の発表を行ったが、資料を充分に生かす段階にまで至っていない。幾つかの異なったテーマの研究を並行的に進めたためでに、資料の精査して、体系的にまとめ上げる段階にまでは至らなかった。しかし、研究は確実に進んでおり、資料をより有効に使った成果を出したい。日本語で活字にしたいので、その作業に集中する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、資料収集、現地調査が一段落したので、これまでの研究をまとめることに集中する。以下の研究発表を予定している。(1)6月末にマルチニック・アンティル大学で国際フランコフォニー学会が開催されるので、ゼゼール文学の世界性を、ケベックの詩人ガストン・ミロンと比較する中で明らかにする。(2)8月に東京外国語大学で開催される雑誌Presence africaineをテーマとしたコロックにおいて、2016年にセネガルで発表した内容を発展させた研究成果を日本語で発表する。(3)10月に日本ケベック学会で(1)のガストン・ミロンとセゼールの比較研究を更に発展させて日本語で発表する。(4)パリ4大学のフォンクワ教授、パリ8大学のヌーデルマン教授その他を招聘し、アンスティティ・フランセーズとの共催で「世界文学から見たフランス語圏カリブ海」と題するシンポジウムを開催する計画が進んでいる。私自身も、3年間の研究成果の核心部分をそこで発表する。以上の発表と平行して、論文を数本刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度2018年3月に開催予定の国際研究集会について、資金的な余裕を拡大するためである。2017年3月にマヨット島でパリ4大学のフォンクワ氏とあった際に、教授と相談し、やはり2018年3月にパリ4大学で開催される同様のテーマの国際研究集会と交流をはかり、二つの国際研究集会をリンクさせることになった。それに伴い、日本での研究集会は、フランス大使館、アンスティティ・フランセーズとの共催にする取り決めがなされた。当初予定していたよりも規模が拡大し、フランスから著名な学者を複数名招聘する計画である。そこで、2016年度の予算使用を控え目にして残金を残し、来年度の国際研究集会に備えることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記にあるように、2018年3月に開催予定の国際研究集会において、複数の著名な学者を日本招聘する予定である。特に、パリ4大学のフォクア教授、パリ8大学のヌーデルマン教授が来日する。それに伴い日本の代表的な研究者にも多数参加してもらう予定である。研究集会組織委員会には、東京大学の星埜守之教授、立教大学の澤田直教授に参加していただくことになった。2016年度の予算残額は、この国際研究集会に充当する。
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