なによりも、この研究の独自性は、飲食という行為自体を文化的行為ととらえ、その社会的意義を明らかにした点にある。そのため、飲食に関する広範なテクストを検討し、飲食の社会的表象を分析した。 もっとも重要な研究成果は、日本の飲食の社会的特徴が自然とのつながりを意識する点にある。人とのつながりはこの自然とのつながりの結果として生じる。これに対して、フランスを中心とする欧米の共食においては、人間同士の関係が重視される。ただし、忘れてはならない点は、日本の自然志向は、食材の選択や料理技術などの人間の技術性によって実現されていることだ。これはまさに文化を積み重ねて自然に至ろうとする日本の風土性の表現である。
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