デリダにおける「自伝の脱構築」のありようを明らかにするという目的に沿って、主として以下の研究を行った。 (1)デリダがテクストに虚構的かつ単独的な動物たちを登場させ、虚構的かつ自伝的なテクストを書いたのは、他者性における単独性と普遍性のアポリアを限界まで思考するためであったことを明らかにした。 (2)デリダにおける自伝的・詩的テクストの展開と晩年まで続いた「灰」モチーフとの関連を精査し、両者に大いなる関係があることを突き止めた。『火ここになき灰』、「送る言葉」、「プラトンのパルマケイアー」を精査することで、「灰」モチーフの登場がデリダにおける自伝的・詩的テクストの端緒を徴づけていることを示した。
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