研究課題/領域番号 |
15K02400
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
副島 美由紀 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (20226707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドイツ現代文学 / スイス現代文学 / ポストコロニアル文学 / ポストモダン文学 / 植民地研究 / 旧ドイツ領植民地 / オーストリア現代文学 |
研究実績の概要 |
①《国内における資料収集および研究活動》: 初年度の地域研究として、予定通り、旧ドイツ領南洋、つまり旧独領ニューギニア及びサモア諸島に関わるドイツ現代文学の研究を行った。作家としては、ゲアハルト・グリュマー、ズィビレ・クナウス、ユルゲン・ペチュル、クリスティアン・クラハト、マルク・ブール、ハンス・クリストフ・ブーフ、アレックス・カピュに関する研究、作品としては、『ポナペの反乱』、『宣教師』、『楽園最後の舞踏』、『星影の旅人』、『帝国』、『アウグスト・エンゲルハルトの楽園』、『ノルデと私』等の、ドイツおよびスイスの現代文学を論考の対象とした。その結果として、ドイツ語圏の現代文学の中でもこの地域に関するポストコロニアル文学及びポストモダン歴史文学に関する洞察を得ることが出来た。以上の研究の成果は、2本の雑誌論文、また1回の学会発表というかたちで公表を行っている。また、「第24回オーストリア現代文学ゼミナール」が、オーストリアの代表的なポストモダン作家であるクリストフ.ランスマイアー氏を招いて行われたので、これに参加し、オーストリア現代文学におけるポストコロニアルおよびポストモダン文学の状況について理解を深めることが出来た。
②《外国における資料収集その他》: ドイツのベルリンで開催された「第15回ベルリン国際文学祭」に参加し、約2週間の開会期間を通して情報収集を行った。この間、作家のハンス・クリストフ・ブーフ氏や文芸評論家のハンス=ペーター・クーニッシュ氏に会ってインタビューを行うことが出来、有意義な海外出張となった。また同時に、ベルリン国立図書館において、日本にない文献の多くを閲覧あるいは貸借して資料蒐集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度のための計画が無理のないものであったため、①国内における資料収集および研究活動、また②外国における資料収集その他、の二つの局面において、計画通りの活動を行うことが出来た。「第24回オーストリア現代文学ゼミナール」のための出張は予定外であったが、翌年度の研究費を前倒し請求することにより、無理なく出張を行い、研究深化のためのチャンスを生かすことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
①《国内における資料収集および研究活動》: 今年度から平成30年度まで、計画書通りの2本立ての研究を続けていくつもりであるが、まず国内における地域研究として、今後は旧ドイツ領東アフリカ及び膠州湾租借地に関する研究を行っていくつもりである。ドイツ・オーストリア・スイスの現代文学作品にこれらの植民地の歴史がどのように反映されているのかを探っていきたい。作家研究としては、ドイツのハンス・クリストフ・ブーフ、クリストフ・ハーマン、イリヤ・トロヤーノフ、オーストリアのラウール・シュロット、トーマス・シュタングル、スイスのルーカス・ベアフス等の研究となるであろう。これらの作家達による、植民地時代の歴史および20世紀末の民族紛争、また21世紀の移民問題等を扱った作品群は、21世紀に入って「ポストモダン歴史文学」という現代文学の一つのブームを形成している。よってこの研究により、ドイツ語圏の現代文学全体における傾向を捉えるのみならず、そのポストモダン、ポストコロニアルおよびインターカルチュラル的な位相を捉えることが出来るであろう。また、次代の傾向として、ポスト・ポストコロニアルな文学作品および理論に関しても洞察が得られることを期待している。
②《外国における資料収集その他》: 前年度と同様、平成30年度まで「ベルリン国際文学祭」への参加による情報収集、及びベルリン国立図書館における資料蒐集を続けることにより、着実な研究の深化を図っていくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画外の出張(「第24回オーストリア現代文学ゼミナール」)があったため前倒し請求を行ったが、1,000円以下の端数が生じたため、当該年度に使用するより次年度の研究費と合わせて使用した方が有効に活用できるため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度すでに研究全体のために必要とされる書籍をかなり購入しているので、次年度の物品費執行額を押さえることが出来るものと考えている。よって現在の助成金によって計画通りの研究を行うことは可能である。
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