研究実績の概要 |
本研究の最終年度の目標は、旧ドイツ領植民地に関する文学研究の一環を完成させることであったが、まず8月の第10回アジアゲルマニスト会議において「新・旧中国小説に見られる敵対者及び他者像の推移」を発表した。ヨーロッパの中国侵略を描いたシュテファン・トーメの小説『夷狄の神』(2018)と百年前のドイツの中国小説における他者像の研究を関連付けたもので、その内容を発展させた同タイトルの論文は、会議の関連書籍『Tagungsband der AGT 2019』に掲載予定である。9月には第19回ベルリン国際文学祭に参加し、ポストコロニアル的な意識の「脱」コロニアル的な変化を確認した。11月には第28回オーストリア現代文学ゼミナールにおいて、トーマス・シュタングル論である「Gnadenlose Bodenlosigkeit und grosse Zaertlichkeit」を発表した。現代のオーストリア人主人公とアフリカの関係を描いたシュタングルの小説『遠い親近性』における、日常的なポストコロニアルの新たな局面を捉えたものである。これまでの論考に関しては、世界文学に関する論文「Welthaltigkeit, Weltliteraritaet und (Post-)Kolonialitaet der deutschen Gegenwartsliteratur」を載せた書籍『Zaesuren - Welt/Literatur』が12月に出版され、さらにドイツの旧南洋植民地に関する論考「The Baining Massacre: The Gazelle Peninsula under German and Japanese colonial rule」を含んだ『Pacific Insularity』の出版(2021年3月)も決まった。それによって5年間の研究の成果の紹介が無事に終了することとなった。
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