令和元年度は主として以下の諸点に取り組んだ。 1. プチャーチン提督の秘書として1853年に長崎に来航した作家ゴンチャローフの『日本渡航記』にうかがわれる、ロシア人の観た幕末の日本及び日本人観 2. 日本最初のプロのロシア語通詞・志賀親朋の生涯と活動 3. 市川文吉、黒野義文、二葉亭四迷、川上俊彦、嵯峨の屋お室など、東京外国語学校魯語科関係者のロシアとの関わり 4. 明治期に来日したコレンコ、グレー、ケーベルといった東京外国語学校、東京帝国大学、東京音楽学校のロシア人教師や、B.ピウスツキ、N.K.ラッセル、B.D.オルジフのような亡命ロシア人、ポーランド人の日本における事跡と日本観 5. 日本の環日本海地域、北海道と、極東ロシア、サハリンとの関わり 6. 日露戦争 7. 北洋漁業と日露関係 8. 1917年のロシア革命後に来日した白系ロシア人の事跡調査 とりわけ研究期間を一年延長することによって、『ブロニスワフ・ピウスツキ伝―〈アイヌ王〉と呼ばれたポーランド人―』を完成、刊行することができた。これによって上記第3~7点において研究をさらに深化させることができた。また第1点について論文を2本執筆、第4点については論文を1本執筆し、学会発表を1件行った。 国内の研究者たちと学会や研究会で緊密に連絡を取り合い、研究成果と情報の交換を行った。また国立国会図書館、早稲田大学図書館、東京女子医科大学史料室、日本女子大学図書館などの図書館や史料館で資料の調査と収集を行った。 またロシア、ポーランド、アメリカなどの当該分野の研究者たちともメールなどで研究成果と情報の交換を行った。 外交史料館に所蔵されている来日ロシア人に関する史料の情報のデータベースへの入力作業と、長崎県立図書館所蔵の志賀親朋書簡の翻刻作業も引き続き進めることができた。
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