研究課題/領域番号 |
15K02405
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大森 雅子 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (90749152)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ロシア文学 / ヴィジュアルカルチャー / プロパガンダ / ソヴィエト文化 / マヤコフスキイ / ブルガーコフ |
研究実績の概要 |
平成27年度は、当初の研究計画にしたがって、ロシア革命後から1920年代のヴィジュアルカルチャーと風刺的な文学作品との関係性について分析を行った。「ロスタの窓」のニュースポスターや、1920年代ネップ(新経済政策)期におけるプロパガンダポスター、広告のスローガン、風刺雑誌の記事や新聞・雑誌の風刺画を収集し、代表的な登場人物と事象ごとに「敵」と「味方」のイメージの特徴を整理した。そして、それらが同時代の文学テクストにどのように反映されていたかを明らかにすべく、ウラジーミル・マヤコフスキイとミハイル・ブルガーコフの諸作品を取り上げ、テクスト分析を行った。 国内では、東京大学や一橋大学において当時のプロパガンダに関する資料収集を行った。また、ロシア国立図書館とロシア国立公共歴史図書館で、1920年代ソ連の風刺雑誌や、風刺雑誌に関する二次資料を収集した。これらの調査によって、特にマヤコフスキイとブルガーコフの戯曲や掌編における風刺的要素との共通点を数多く見出した。 以上の成果を、2016年2月5日から6日にかけて開催されたモスクワ大学ジャーナリズム学部の国際学会において口頭発表した。また、同大学同学部の紀要にロシア語論文を投稿した(刊行は2016年10月の予定)。さらに、2014年に刊行された研究代表者の単著『時空間を打破する ミハイル・ブルガーコフ論』に関するエッセイを『季刊iichiko』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の研究計画では、既存の一次史料と二次文献の収集・整理を徹底して行った上で、同時代の文学テクストの分析に移ることになっていた。実際、この計画に沿って資料を収集していったのだが、特に1920年代に創刊された風刺雑誌の数が予想以上に多く、それらの資料収集と論点整理に時間がかかった。そのため、マヤコフスキイとブルガーコフのテクストに関してはメディア論の観点から比較分析することができたものの、その他の文学テクストを考察する段階には至らなかった。また、この時期の聴覚メディアに関する考察もまだ十分とはいえない。しかし、平成27年度の研究成果は、同時期の他の作品分析にも生かせると考えられるので、次年度も継続的に取り組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、平成27年度に体系化した「敵」と「味方」のイメージ論を援用しながら大祖国戦争期のマス・メディアを分析する予定だったが、1920年代末から1930年代、及び40年代のメディア文化における連続性と非連続性を整理する中で、大祖国戦争期へ突入する前段階としての30年代の大衆文化と文学テクストとの関係性を詳細に分析する必要性を認識した。そこで、平成28年度の前半では、1920年代末から1930年代の文学作品の分析に主眼を置き、メディアとの接点を考察する予定である。その後、当初の予定通り、大祖国戦争期の大衆文化について検証していく。この作業を通じて、平成27年度の研究で不足していた1930年代ソ連の聴覚文化の分析を補っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1920年代ソ連の風刺雑誌に関する資料収集とその分析に時間がかかったため、1930年代ソ連の大衆文化に関する資料及び同時代の文学作品の二次資料を収集・整理する作業が大幅に遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ロシアの図書館での資料調査と収集に6割程度予算を使用する。次年度の研究計画に基づいた資料収集と並行して、平成27年度の研究で不足していた1930年代ソ連の大衆文化に関する調査も引き続き行う予定である。また、ロシアでの国際学会での発表の旅費に3割充てる。残りの1割で書籍を購入する。
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