本研究は、ロシア革命後から冷戦期までのソ連文学を、視聴覚メディアとの関係性の中で考察し、20世紀ロシア文化史に対する新たな視座を獲得することを目的とする。その際、ソ連の文学作品をメディア論や文化社会学の観点から総合的に分析し、大衆文化の諸相の中で創作された過程を明らかにする。 研究期間の最終年度にあたる平成30年度は、当初の研究計画にあった大祖国戦争期のメディア文化と文学テクストの関係性について、特に児童文学作家のマルシャークのテクストに絞って分析を行った。独ソ戦期(1941-45)のマルシャークの諷刺詩が、当時の視聴覚メディアでいかに取り上げられ、それらが彼の創作活動においてどのように位置づけられるか考察した。そして、2018年12月2日に大阪大学で開催されたシンポジウム「朝日会館と京阪神モダニズム―戦前・戦中・戦後」のパネルディスカッションにおいて、この研究成果の一部を発表した。現在、論文を執筆中である。 また、本研究課題の派生的な研究として、後期ソ連と日本におけるソルジェーニツィンの受容とマス・メディアを通した作家のイメージ形成について、比較文化的アプローチから考察を行った。この研究成果は、ロシア語論文「ソルジェニーツィンと日本」にまとめ、学術雑誌『ソルジェニーツィン:ロシア文学と国民文学』に発表した。
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