研究課題/領域番号 |
15K02406
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金澤 美知子 日本大学, 芸術学部, 研究員 (60143343)
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研究分担者 |
塩川 徹也 東京大学, 名誉教授, 名誉教授 (00109050)
ウィリアムズ ローレンス 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 講師 (50750486)
宮田 眞治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70229863)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 18世紀 / 旅行 / ディドロ / カサノヴァ / エミン / グランド・ツアー / ワルシャワ / ペテルブルグ |
研究実績の概要 |
本研究は、近代ロシアの市民社会形成期における新たな精神文化の確立のプロセスを、書簡、旅行記、回想等を含む広義の文学作品に刻まれた「時間」の表象を考察することによって明らかにしようとするものである。ロシア社会は18世紀初頭にヨーロッパ先進諸文化を移入することによって近代化への一歩を踏み出し、このプロセスの中で「時間」についての理解と表現もまた変化を遂げたことが予想される。このような見通しのもと、昨年度までの作業を踏まえて、本年度は次のような作業を行った。 「時間」理解への新たな手がかりとして、ヨーロッパ内の移動、特に西欧からロシアへの「旅」を考察した。ヨーロッパの東端に位置するロシアと西欧の交流は、一部の地域を除くと18世紀に普及し、本格化した。すなわち交流が多様化し、また量的にも格段に増加したのである。交流には直接的な交流と間接的な交流があったが、今回は直接的な交流の中の人物往来に注目し、18世紀に西欧からロシアに旅した人物を取り上げた。 このカテゴリーに分類される人物は多数挙げられるであろう。しかし、ここでは事例の数量で判断するのではなく、具体的に個人を追跡するという方法をとった。取り上げたのは、Denis Diderot(ロシア滞在1773-74)、Giovanni Giacomo Casanova de Seingalt(ロシア滞在1764-65)、F.A.Emin(ロシア滞在1761-70)の3人である。 結果として、三者三様の旅の中にヨーロッパの異なった地域の世界観が映し出されており、「時間」理解への手がかりを得ることができた。まだ作業は完了していないが、一部成果を発表した。作業は次年度も継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度末に立てた構想に基づき、今年度は「時間」の表現について理解を深めるためにヨーロッパにおける移動、広義での「旅」について考察した。この作業の一環として、18世紀後半のヨーロッパの東西交流を調査した。 西欧とヨーロッパ東端のロシア帝国の相互交流については本課題にとって示唆的な題材が多く、年度後半になって、新たな視点を取り込んで研究が発展する見通しとなった。本年度も一定の調査結果は得たものの、さらなる調査の必要が生じ、それに応じて新たな文献が必要になり、その一部は来年度の入手となった。そのため作業の残りは来年度に実施することにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の作業を継続し、完了させて、全体を総括する。 ヨーロッパ内移動すなわち「旅」の事情についての調査を踏まえて、ヨーロッパ諸地域の文化に見られる「時間」の表象とロシアにおける「時間」についての理解および表現の比較考察を行う。本研究に関するこれまでの成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は「旅」のテーマを通して本課題の調査を行ったが、アプローチの方法の多様さのため、必要な資料も増え、本年度内に入手することができなかった。あわせて調査も完了することができなかった。未使用の研究費は次年度の資料購入と調査にあてる予定である。 (使用計画) 18世紀~19世紀前半に書かれた文学作品の他、旅行記、書簡、日記等の資料の購入に使用する。関連資料を入手し、本課題に関する研究の総括を行う。
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