研究課題/領域番号 |
15K02408
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳原 孝敦 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (20287840)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 現代スペイン文化 / ポスター芸術 / 壁画運動 / スペイン内戦 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
今年度はまず、立石博高編著『概説 スペイン文化史 18世紀から現代まで』(ミネルヴァ書房、2015)に、以下の3本の論文を寄稿した。「第8章 国民文学と地方文学」(182-205ページ)、「第13章 映画の世界」(291-305ページ)、「第15章 「国技」としての闘牛」(320-330ページ)。これらは近代スペインの文化史をめぐる概説ではあるが、20世紀に入り、スペイン文化がスペイン語圏ラテンアメリカと取り持つ関係にも配慮したものであり、私の研究の基礎をなすものと位置づけられる。 また、私の所属する東京大学大学院人文社会系研究科の現代文芸論研究室が発行する雑誌『れにくさ』第16号(2016年3月)に研究ノート「突き出した指はどこから来て、どこへ行くのか スペイン内戦のポスターとソヴィエト、そしてメキシコ」(91-99ページ)を発表した。これはソヴィエトとスペインのポスター芸術の影響関係、および、それらとメキシコ壁画運動のかかわりについてのある予測を示したものであり、以後、私の研究のひとつの極を形成すると思われる。 この研究ノート執筆直後にはメキシコ合衆国への調査旅行を行い、スペイン内戦を機にメキシコを訪れたヨーロッパ知識人たちについての調査を行った。 また、以下の翻訳単行本を出版した。いずれも大西洋をまたいでスペインとラテンアメリカで活動する作家たちの作品だ。エドゥアルド・メンドサ『グルブ消息不明』東宣出版、2015、232ページ。セサル・アイラ『文学会議』新潮社、2015、192ページ。フアン・ガブリエル・バスケス『物が落ちる音』松籟社、2016年、314ページ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻訳などの注文仕事もあったため、自身の研究を活字化する作業に期待したほどの進展がないのが悔やまれるところだが、準備は怠っておらず、このまま展開すれば計画どおりに進捗するものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
メキシコ調査旅行で収集した資料などを基に、論文の活字化を計る。また、かねてから準備中のメキシコ市をめぐる集合的記憶に関する本にも、今回の成果を採り入れ、レオン・トロツキー、ジョゼップ・レナウ(スペインのポスター画家)、ルイス・ブニュエルといったヨーロッパからの亡命者にまつわる記憶の章も立てる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費や物品費等に予定額以上を使い、その他の予算の執行を控え、結果として5,000円あまりの残高が出た。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度の残高は今年度の物品費、とりわけ書籍等の資料の購入に充てる予定。
|