本研究を通して、近代的な家族像がドイツ語圏における政治意識の形成に際して果たした役割を明らかにすることができた。従来の研究においては、近代的な市民家族像の政治的な機能が、主に保守的な秩序維持の道具という点に見出されてきたが、本研究では、近代的な家族観が、「人間的なもの」の具体例という理想主義的な側面を併せ持っていたことに注目した。そして一見対立的に思われる両面を併せ持っていたことこそが、市民家族の理念を様々な政治的立場に結びつけていたことを論じ、シラーやヴィーラントの分析を通して、これがコスモポリタニズムやパトリオティズムの言説において重要な役割を果たしたことを示した。
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