研究課題/領域番号 |
15K02414
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三谷 研爾 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80200046)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多言語社会 / 境界都市 / 境界文学 / プラハ / マグリス |
研究実績の概要 |
本年は、昨年度に構築した研究基盤の上にたって、マグリスの「境界文学論」が提示する〈プラハのドイツ語文学〉とトリエステのイタリア語文学との平行的関係について検討し、複数文化的な環境における言語的・民族的葛藤の深化と文学活動との連動を歴史的にとらえる視座を確認した。こうした理解をふまえ、日本独文学会において川島隆、阿部賢一、中村寿、島田淳子とともにシンポジウム「〈プラハのドイツ語文学〉再考」を組織して、ドイツ/チェコ/ユダヤの3つの言語文化的ファクターの衝突と共存について、ドイツ研究とスラブ研究という従来の学問分野を横断する「ボヘミア研究」の可能性を提示した。この方向のさらなる具体化に向けて、阿部賢一や篠原琢などとともにボヘミア・フォーラムを組織し、日本における〈プラハのドイツ語文学〉研究の現状を報告して、研究者のさらなるネットワーク化を進める足がかりとした。 以上の成果のうち、マグリスの所説の検討結果を論文「継受される境界文学」(『独文学報』第32号)として公刊したほか、上記シンポジウムの成果を日本独文学会研究叢書として公表する準備を進めている。また研究協力者島田淳子は、モニーコヴァーを中心に第二次世界大戦後のチェコ系作家のドイツ語による文学活動について研究を深め、その成果を順調に発表している。 海外における文献調査は、引き続きオーストリア国立図書館とベルリン国立図書館を中心に実施した。あわせて、マグリスの「境界文学」論への理解を深めるため、リュブリャーナの歴史博物館を実見し、ハプスブルク帝国治下の同地の複数文化的環境について情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、本研究課題の問題意識を基軸に、日本独文学会秋季研究発表会においてシンポジウム「〈プラハのドイツ語文学〉再考」を組織して、阿部賢一、川島隆といった主導的な研究者がそれぞれに率いている共同研究グループとのネットワーク関係を構築することができた。この関係をベースに、さらなる共同研究プロジェクトも浮上しており、本研究課題後半の活動に結びついていくものと期待できる。 文献の収集と分析については予定通り進捗中であり、またマグリスのプラハ論についての考察成果も学会論文として公表済である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、前年度におこなった日本独文学会でのシンポジウムの成果を、日本独文学会叢書の1冊としてオンライン公開する予定である。また、前年度より阿部賢一、篠原琢などとともに組織した領域横断的なボヘミア研究グループの活動、さらには阿部賢一、井上暁子との共同研究にも参画する予定である。海外調査と個別テクストの分析については、当初の計画に沿ってすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本独文学会シンポジウム報告書のための組版費用の発生が、年度をまたいで2017年5月となることが見込まれたため、その分を次年度に取り置いた。
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次年度使用額の使用計画 |
日本独文学会シンポジウム報告書を、同学会叢書オンライン版として公開するにあたり(公開予定は2017年夏)、組版作業を学外に発注する。
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