研究課題/領域番号 |
15K02416
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福元 圭太 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30218953)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハンス・ドリーシュ / 生気論 / エンテレヒー / 情報 |
研究実績の概要 |
申請者はこの課題の遂行のため、平成27年9月中旬から下旬にかけ、ドイツ連邦共和国マグデブルク市ならびにミュンヘン市に出張した。マグデブルク市において、ハンス・ドリーシュに関するモノグラフィーを書いたトーマス・ミラー氏(在野の哲学者)と会見。氏の著書に関して申請者が準備した質問に対する回答をうかがい、研究の動向について議論したのち、申請者の今後の研究に関するアドバイスをいただいた。 その後ミュンヘンの州立図書館ならびにミュンヘン大学附属図書館で、本申請課題に関する一次文献ならびに研究書や雑誌論文などの二次文献を収集。主としてスキャンしたデータをUSBでもちかえり、日本でプリントアウトして今後の研究資料を整備した。 帰国後は平成27年11月に論文「Die Offenbarung des Geheimnisses ― Die "Inflationspropheten" oder die Inflation der Propheten ―」で20世紀のネオ神秘主義的「予言者・預言者」について(これはフェヒナーからヘッケルを経てドリーシュにいたる自然神秘主義哲学と無縁ではない)、 平成28年3月に「ハンス・ドリーシュ試論 ―「エンテレヒー」の行方(1)―」を九州大学言語文化研究院の紀要『言語文化論究』に発表した。「ハンス・ドリーシュ試論」は本邦においてはほぼ唯一と言える米本昌平氏のドリーシュ研究に基づきながら、氏が扱い得なかったドイツ語の一次および二次資料に当たった論文で、ドリーシュの生涯、生気論の生成とその概説、エンテレヒー概念の解説と、それが現在の述語で言えば、米本氏がつとに指摘しているように、「情報」に相当するであろうことを論じたものである。 また2016年2月21日に本学言語文化研究院主催のシンポジウム「今、振り返るモダン、ポストモダン―メディアと物語」において「メディアとしての身体 ― 無意識と情報 ―」と題した口頭発表を行い、フェヒナー、フロイトとドリーシュについて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トーマス・ミラー氏との会見により、研究の方向性に見通しがたったことと、ミュンヘンでの資料収集が質・量とも充実したものであったため、最初の論文「ハンス・ドリーシュ試論―エンテレヒーの行方(1)―」でドリーシュの生気論の主たる特徴を把握できた。それゆえ「おおむね順調に進展している」という自己評価を与えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
ミュンヘンで収集した資料のなかで、まだ未処理のものがいくつかあり、その精査、特に本になっていない雑誌記事の精査が必要であると思われる。もっともあまり重要でない論文もスキャンしてきた可能性があるので、その価値の判断、本課題の研究への取り込みの有無自体を検討しなくてはならない。平成28年度はドリーシュの思想を寄り明確に抽出した上で、ドリーシュを批判する生物学者や哲学者の論を検討し、さらにドリーシュが他の思想家や芸術家に与えた影響に目配りを始めることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミュンヘンにおける資料収集によって、本補助金で購入しなければならない本の数が減った上、近年ではコピーではなく、スキャニングが主流になっており、コストがそれほどかからなくなってきたこと、またミュンヘン大学附属図書館では、学術目的のためのスキャンがすべて無料となっていたため、資料収集のコストを大幅に削減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度以降は資料収集のためのドイツへの旅費を申請していないため、日本において資料収集を進めなくてはならない。そのため、資料の購入、あるいはスキャンの依頼とデータの送付には、前年度よりもコストがかかると思われる。持ち越した予算はそれに充当する予定である。
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