研究課題/領域番号 |
15K02418
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
高橋 健一郎 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (80364206)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音楽批評 / アヴァンギャルド / ロシア音楽 / 未来派 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、ロシア・アヴァンギャルドの音楽論の最も基本となった、ニコライ・クリビンの「生の基礎としての自由芸術」のテクストを分析し、それを学術論文の形で発表した。そこでは、クリビンの芸術観とロシア象徴主義や西欧の反実証主義的哲学、四次元思想、神秘思想、東洋思想、プリミティヴィズムなどとの共通点や、他の芸術分野の手法・理念(「ザーウミ」、「ファクトゥーラ」、「転位」など)との接点などを明らかにした。 また、それと並行して、クリビンの音楽論の特に東洋思想との接点に焦点を当てた学術論文も発表した。その研究により、東洋と西欧の音楽観の結合が、20世紀半ば以降の現代音楽に先駆けて1910年前後にクリビンの思想にはっきりと現れていたことを示した。 さらに、クリビンの自由芸術論と近い立場をとるロシア・アヴァンギャルドの芸術家ミハイル・マチューシンの芸術論や音楽論を分析し、その世界観を整理した。それは、四次元思想とも結びつきつつ、世界を有機的な全体、しかも常に変化し、動きを伴うものと捉える世界観である。そして、それが反映されている作品として、1913年にマチューシンが音楽を書き、カジミール・マレーヴィチが美術を、アレクセイ・クルチョーヌィフが台本を書いた未来派オペラ《太陽の征服》の分析を行った。それによって、有機的世界観が作品においてどのように実現されているのかを明らかにした。その成果は、学術論文の形で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究の土台の上に、それを直接的に発展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の図書館やアーカイブを利用しながら、さらに分析を進め、研究会や学会などでの発表、論文執筆を通して、これまでの3年間の研究を総合的な視点からまとめ、考察を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数残額である。 次年度に文房具などの購入に充当する。
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