研究課題/領域番号 |
15K02419
|
研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
竹内 拓史 麗澤大学, 外国語学部, 准教授 (00431479)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | エルンスト・ビューヒナー / ゲオルク・ビューヒナー / ルイーゼ・ビューヒナー |
研究実績の概要 |
前年度二回の研究発表をしたエルンスト・ビューヒナーの鑑定書の特徴と、彼が息子のゲオルク・ビューヒナーの自然観や革命観、さらには仕事の選択にまで影響を与えた可能性について論文としてまとめた。 本研究費以外の研究費で渡独した際に、マールブルク大学のビューヒナー研究所を訪れ、同研究所のフンク博士の助けを借り、現存するエルンストの鑑定書が6点しかないことが確認できたことは一つの成果である。また、ゴッデラウにあるビューヒナーハウスのシュタルク氏とエルンストおよびその他のビューヒナーの家族について議論する機会があり、今回完成したエルンストについての論文だけでなく、今後まとめるビューヒナーの妹ルイーゼの女権運動について考える際の助言も得ることができた。 ルイーゼの著作はまだすべて精読できているわけではないが、現在のところの見解では、彼女の女権運動の思想もまた、父エルンストのドラスティックなまでに徹底して冷徹かつ客観的に自然を観察する態度の影響を受けていると考えられる。一方で兄ゲオルク・ビューヒナーとの違いは、父エルンストの現実的で実際的な思想と行動原理の影響をより強く受けている点にあるのではないかとも推測している。彼女の権利運動の思想に兄の革命運動の影響があることは間違いないが,その革命運動の失敗を見ていたことに加え,父親の影響のために,彼女の運動はより現実的な路線をとることになったのではないだろうか。 エルンスト・ビューヒナーのゲオルク・ビューヒナーについての影響を考察した論文「父から受け継いだもの、受け継がなかったもの ―エルンスト・ビューヒナーの鑑定書とその息子への影響―」は、今年度中に刊行予定の論文集(タイトル及び出版社未定)か、日本ゲオルク・ビューヒナー協会の次号の論文集に投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ゲオルク・ビューヒナーの妹ルイーゼの女権運動の思想にビューヒナーの自然科学の思想がどのように影響しているのかを明らかにすることが本研究の最終的な目的であるが、その前段階として調べたビューヒナーの父エルンストの自然観がビューヒナーの自然観にどのような影響を与えているかの考察に予想外に時間をとられてしまった。しかしその甲斐があり、エルンストに関しては自分なりの見解をまとめられたと考えている。 研究が遅れてしまった大きな理由としては、学部の役職者としての業務が予想以上であったうえに,大学を移動することになったために、新旧両大学での作業等も重なり,本来研究のための調査等の時間を十分に確保することが難しかったことが挙げられる。結果として学会発表、論文発表共にできなかったことは痛恨の極みである。 このような理由で今年度は本研究費を使用することもほとんどなかった。今後は大学を移ったため役職者ではなくなること、そのため研究にこれまでより多くの時間が取れそうなことと、さらに研究費も多く残っていることなどを考慮すると、ルイーゼの権利運動とゲオルクの自然科学の関係を自分なりに明らかにするためには、場合によっては、研究終了を一年延長することも有効ではないかと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
エルンスト・ビューヒナーの鑑定書を検討した結果、彼の自然観が息子のゲオルク・ビューヒナーの自然観のみならず宿命論や革命思想へ影響を与えていることが分かった。今後はエルンストとゲオルクそれぞれの思想が、ゲオルクの妹ルイーゼ・ビューヒナーの女権運動にどのような影響を与えたかを検討する。そのためにはまず、エルンスト同様これまでほとんど明らかにされてこなかったルイーゼの権利運動の思想と実態、そしてそれらが当時の権利運動の中でどのような特徴を持っているのかを明らかにしなければならない。 可能であれば、ほかの兄弟の自由主義思想との関連にも踏み込みたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学部の役職者としての仕事が予想以上に多く、ドイツでの資料収集のためのまとまった時間をとることができず、旅費として計上していた助成金を使用できなかった。また、研究のための時間を十分に確保することができず、物品費等を使用することもなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでできなかったドイツでの資料収集をする予定なので、そのための旅費、資料収集、学会発表などに使用する予定です。また、本年度ほとんど研究ができなかったことを鑑み、研究終了年度を一年延長することも考えているので、その場合は残額を二年かけて使用して、本研究を完成させることになるだろう。
|