移住に関して、ⅰ)移住者の出身地の文化との関係、ⅱ)受入れ先の文化に対して持つ関係、ⅲ)複数の文化が混合するハイブリッドな領域の創造という3つの文化人類学的観点で移民テキストを分析し、これらの観点で分析する有効性が確認できた。また、移民テキストと第二次世界大戦中の亡命テキストの分析比較により、双方が文化の境界を越えたトランスカルチャー性を有することが明かになった、即ち、双方の著者は複数の文化に属し、文化の多重性が特徴となっている。このことから、移住の経験を文学的に表現することに関しては、移民文学と亡命文学との間に明確な線引きはなく、トランスカルチャー文学という概念のもと分析される必要がある。
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