研究課題
最終年度に行った研究調査により、期間全体のテーマに対する以下の結論が得られた。すなわち、イシス神をめぐる表象に関して、この表象の近代における意義は、理論的には以下のように説明される。科学革命以降の宇宙観は、他の天体の住民を想像すること(「世界の複数性」)によって、啓示あるいは奇跡をとおして神が地球世界にのみ介入する物語に疑義を提起する。他の天体の住民の存在は、地球上の様々な非キリスト教徒に投影されるが、中国の文明の存在(「対蹠人」の一変奏)が、啓示なき道徳的社会の可能性に、ヨーロッパ世界を気づかせしめる。「世界の複数性」、「対蹠人」、はクーンが提示したテーゼ「原子論と非中心的、無限世界空間」のフォーマットとともに、17世紀から18世紀全体のヨーロッパ・ドイツの思想状況を説明する鍵であり、これらを背景として、ドイツのとりわけ汎神論論争(スピノザの哲学)は理解され、またゲーテを代表として、人文科学と自然科学にまたがり世界を了解する可能性を模索せしめる。そのゲーテは、アレゴリカルには女神として理解される、宇宙空間における生成の原理を、「世界の複数性」の時代において可能となる神性として理解し、イシスはその図像的表現として流通した。ゲーテにおける「永遠に女性的なるもの」は、比較文化的には、日本における弁才天信仰としてまた理解可能である。これら研究成果を、日本18世紀学会においてはシンポジウムを主催する形(共通論題2「世界の複数性」)で、ボン大学における講演と、書物(共著『「神話」を近現代に問う』)を通して発表した。また学術的調査としては、イシスが混交した地中海地母神の源流を求めて、ギリシャ的地母神崇拝が行われた場所として今日なお明確に記憶されるシチリアのエーリチェにおいて、神殿がかつて位置した山上の場所の地勢的観点での調査を敢行した。以上は全てが重要かつ新しい視座を提起したと考える。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Akten des XIII. Internationalen Germanistenkongresses Shanghai 2015 -Germanistik zwischen Tradition und Innovation
巻: 8 ページ: 100-107
シェリング年報
巻: 25 ページ: 50-59
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