研究課題/領域番号 |
15K02426
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
諫早 勇一 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (80011378)
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研究分担者 |
大平 陽一 天理大学, 国際文化学部, 助教授 (20169056)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 在外ロシア / 亡命文学 / ロシア映画 / ロシア人芸術家 / 自伝 / ルースキイ・ミール |
研究実績の概要 |
本年度は9月に札幌大学で「ルースキイ・ミール」の展開と題した研究会を開き、札幌大学の岩本和久教授には、ロシア出身ながら欧米で活躍した映画監督アナトール・リトヴァクについて、札幌大学の宮川絹代助教にはゲオルギイ・イワーノフらの詩人を中心に、「第一次ロシア亡命文学における青のイメージ」について、望月恒子・北海道大学名誉教授には「在外ロシアにおけるプーシキン」について講演をお願いし、在外ロシアの文学・映画について理解を深めることができた。 この研究会では研究代表者の諫早も「在外ロシア芸術家と本国」と題した研究報告を行い、在外ロシア芸術家の活動は、在外ロシア作家・詩人のような文学者の活動とは違って、ソ連本国とは断絶していなかったことを紹介したが、このテーマに関しては、10月にロシア史研究会から招かれて「ロシア革命とディアスポラ」と題した共通論題で行った報告「革命と在外ロシアの芸術家たち」において、演劇人ミハイル・チェーホフ、音楽家ニコライ・ナボコフらの活動を具体的に検証することによって、さらに発展させることができた。 一方研究分担者の大平は、京都大学人文研で行われた「ロシア革命百周年記念映画祭」で「《十月》における映像言語の実験」と題した招待講演を行い在外ロシア映画について論じたほか、中村唯史・京都大学教授との共編によって刊行された『自叙の迷宮:近代ロシア文化における自伝的言説』で「亡命ロシアの子どもたちの自叙」について論じるなど、亡命ロシアの子どもたちの自伝についても分析を行っている。3年目を迎えて、いろいろな刺激を受けながら研究は広がりはじめ、最終年度に向けた準備は整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は6月に京都大学人文科学研究所で在外ロシア映画についての研究会を、12月には神戸大学国際文化学部で「ポーランドの亡命ロシア」と「両大戦間のロシアの美術」についての研究会を開き、諫早と大平もラウンドテーブルに参加して議論に加わった。2年目は9月に京都大学文学研究科で、若手研究者にお願いした現代ロシア文学と現代の在外ロシア出版についての報告と、アトスなどの宗教世界とロシア文学とのかかわりについての特別講演も並べた研究会を、さらに2月には駒澤大学会館で、亡命ロシア文学・音楽・思想についての報告を中心にした研究会を開いた。そして、ここでも諫早、大平は自由討議に参加するなどして、積極的に在外ロシアの文化について理解を広げている。3年目の2017年度は9月に1回研究会を開いただけだが、それは最終年度に海外から研究者を招いて国際シンポジウムを開催する準備のためであり、諫早、大平ともこれまでいくつかの論考を発表し、招待講演にも積極的に参加しながら、研究を深めている。本研究の進捗状況はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる2018年度は12月に京都大学で国際シンポジウムを開催するが、すでにプラハのスラブ図書館館長であるLukas Babka氏からは講演の承諾をいただいている。またこの研究会には在外ロシア映画、在外ロシア文学を専門とする若手研究者と、在外ロシア文化研究に関する日本を代表する研究者からも講演・報告の内諾をいただいており、充実した研究会が期待できる。その後2月をメドに冊子体の研究報告書を刊行して、諫早、大平の研究成果を載せるだけでなく、研究会に参加してくれた何人かの研究者の論考も載せるなどして、これまでの成果を公開したいと考えている。亡命ロシア文学、在外ロシアバレエなど個別的な研究はこれまでも行われていたが、芸術を中心にした在外ロシア文化の全体像に迫ろうとする本研究は、日本でのロシア文化研究に一石を投じるものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は9月の研究会のほかに、2月頃国内の研究会を開催する予定だったが、最終年度である2018年度に国際シンポジウムを開き、チェコからスラブ図書館の館長を呼ぶ計画がまとまったので、そのための招聘旅費、さらに国内から招聘する研究者たちへの旅費・謝金がかさむことを考慮して、20万弱の金額を翌年に持ち越すことにした。
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