研究課題/領域番号 |
15K02432
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上田 望 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90293331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 梁山伯祝英台物語 / 中国四大伝説 / 寧波 / 越劇 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではもともと南中国で流行し始めた地方色豊かな梁山泊祝英台の二人にまつわる伝説・物語が、千年以上の時間をかけて中国を代表する物語(中国の無形文化遺産)へと昇格していくプロセスと理由を解明することを目的としている。梁祝物語の歴史的な変遷を解明することによって、中国の従来の文学史や演劇史、芸能史の研究に対して新たな知見を提示し、中国における「伝統」とされているものの本質を問いなおすとともに、中国の無形・有形の文化遺産の調査や保護、活用に関する問題提起にもつながる研究となる。 本研究課題ではこれを実現するための具体的な方途として平成28年度は、1)文献資料の体系的な収集と整理 前年度に引き続き、中国の中山大学古文献研究所などと協力しながら梁祝故事を含む俗文学の文献資料を調査し、ジャンル・演目・上演地点などの基本情報を整理して電子化した。2)映像資料の体系的な収集と整理 中国へ現地調査に赴き、映像資料(DVD・VCD)を収集し、基本情報を整理して伝統芸能映像資料データベースの充実化をはかった。3)作品(文献・映像)の解読と考察 研究協力者の施盛凱氏の協力を得て関連する中国の地方劇・甬劇の整理を進め、「借妻」などの校注、翻訳を作成した。4)中国での梁祝故事の受容と民間信仰の実態調査 梁祝故事の発祥地とされる江蘇省の宜興、浙江省の杭州、上虞で梁祝遺跡の現地調査を実施し、梁祝信仰や伝承、物語について先行研究(周静書1999、渡邊明次2006)や地元の人間の口碑を照らし合わせ、遺跡の現状や変化について検証した。5)まとめと成果発表 ①成果の一部を上田望「「梁山伯と祝英台」物語の文化空間」(西村聡編『言語文化の越境、接触による変容と普遍性に関する比較研究』、金沢大学人間社会学域人文学類、2017年1月、pp45-54)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。平成27年度に実施できなかった浙江省の調査地点に加え、平成28年度は江蘇省の調査地点を踏査したが、河南省の汝南、山東省の諸城については平成29年度に調査を完了する予定である。校訂・解読作業については、選択した作品に若干入れ替わりがあるが、研究計画全体から見れば大きな問題無く、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる平成29年度は残された2省の現地調査に加え、文献資料と映像資料の整理と統計処理、作品(文献・映像)の解読と分析の結果を総合して梁祝故事の伝播分布地図を作成し、故事の伝播した地域を確定する作業を行う。 成果の発表については、①梁祝故事の代表的な戯曲作品を選び原文と注釈、日本語訳文を付し、報告書『梁祝故事戯曲選』として公表する。②本研究で収集整理したデータを、金沢大学の中国伝統芸能映像資料データベースを通じて情報発信する。③中国の梁祝故事の研究者の協力も得つつ本研究を総括し、最終報告書『梁山伯祝英台伝説の文化空間』を完成させ公刊する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に二度予定していた中国での現地調査のうち、第2回目については中国広州の中山大学から大量の俗文学に関する資料収集について便宜を図って貰えることになったことから急遽調査地を河南・山東から広州に変更したために旅費で次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に河南・山東の二地点の遺跡を調査することで執行する。
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