本研究は明治から大正時期に相次いだ古写本の発見を、所蔵の発見とテキストとしての価値の発見の二つに分けて考察を行った。前者については、当初博物局など公的機関がその発見を主導したのに対し、後半期はオークションなどを通し個人が発見するようになるという変化を明らかにした。また、前半期のこれら古写本の影印は鑑賞を目的としたものであったが、次第に中国学におけるテキストとしての価値が認知されて行くことを、『王勃集』の発見を例として論証した。本研究では、明治末から大正時期の日本伝存書の影印とそれらに対する書誌学研究を象徴する人物として羅振玉に注目し、彼の徳富蘇峰の蔵書の影印の経緯について考察を加えた。
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