研究課題/領域番号 |
15K02438
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
釜谷 武志 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30152838)
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研究分担者 |
廣澤 裕介 立命館大学, 文学部, 准教授 (20513188)
林 香奈 京都府立大学, 文学部, 准教授 (30272933)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 罪 / 中国古典文学 |
研究実績の概要 |
先秦から漢代にかけての、祖先と子孫の関係性を対象にした。とりわけ後漢の班固「幽通賦」とそこに施された曹大家の注に着目して、幸不幸が後天的な要因によって決定するとともに、先天的にすでに決定している部分もあること、その際、祖先の行動が子孫の禍福に影響を及ぼすという考えが当時に存在していたことを明らかにした。これは、子孫から見れば、生まれた時から罪を背負っていることになり、ある意味では原罪に近い要素をもっていることになる。吉川忠夫氏が前漢の官吏について闡明された罪の意識に近似したものが、後漢の文学作品にも見られるのは、大いに注目しなければならない。 また陶淵明「桃花源記」で「外人」に話すに及ばぬというのは、倫理に訴えることで罪悪であることを婉曲的に伝えていると解釈することもできる点を示した。 中国民衆の罪の意識を考える前提として、一般市民の生活感情全般に対する基礎的な調査を、近世以前の各時代の口語で記された芸能作品や文学作品を対象に行った。主に、敦煌変文で知られる仏教との関係が強い絵解き芸能とその後世への影響、また親子の離別・再会を描く諸作品の中での罪に関わる表現、そして罪との関係が深いと考えられる地獄や冥土の裁判に関する調査を行った。親子の離別に関わる罪の意識の重要性については、さらに掘り下げる必要性を認識した。 「性」という西洋的な概念を用いて、明清から現代にかけての中国社会の様相や価値観の変遷を考察した。特に清朝が漢民族の思想や伝統的価値観にどのような作用を与えたかという視点から考察して、纏足・男女隔離・溺女・人身売買・同姓関係などさまざまな問題について、法律・制度上の「罪」、社会通念上の「罪」がどう捉えられていたかを具体的に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者、分担者ともに各自の課題について、ほぼ予定とおりに研究を進めているから。
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今後の研究の推進方策 |
すでに考察を行った内容については、論文等によって公開する予定である。 それと同時に、新たに気づいたいくつかの問題についても考察を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国古典文学関係図書の購入を予定していたが、年度内に発行されなかったり、輸入に時間を要したりして、年度内に購入することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
発注済みの外国図書は、大部分が次年度初めに入荷することがすでに明らかになっている。
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