研究課題/領域番号 |
15K02452
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
清水 恵美子 茨城大学, 社会連携センター, 准教授 (20531734)
|
研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
キーワード | 比較文学論 / 岡倉覚三 / 岡倉由三郎 / 日本美術 / 文化交流 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、27年9月17日より23日まで、米国のボストン美術館、ガードナー美術館、ボストン・アセニウム、アートコンプレックス美術館、ボストン公共図書館、ボストンカレッジ美術館において、岡倉由三郎のローウェル・インスティチュート講演会、岡倉覚三・由三郎関連資料の調査、ラ・ファージ展、富田幸次郎寄贈茶室の見学、美術館学芸員や研究者と意見交換を行い、各機関で収集した資料の分析、考察にあたった。また、27年12月26日より30日まで、インドのマトゥラー博物館、アクバル廟、国立博物館、クトゥプ・ミナールにおいて、収蔵美術品や建築を実見し、『東洋の理想』で言及されたインド仏教美術の変遷、イスラム美術の特徴を把握するとともに、覚三の「日本」の語りとインド美術との関連を考察した。 27年12月1日に開催された公益財団法人大倉精神文化研究所・岡倉天心市民研究会共催公開講演会において、「岡倉覚三・天心と弟・由三郎」の論題のもとに、由三郎の著作や活動を美術や芸術思想の視座から分析し、岡倉兄弟の共通性を双方向的に照射しながら、影響し合う二人の関係性を考察した。また、28年2月18日に茨城新聞社主催セミナー水睦会において、「岡倉天心と五浦」の論題で講演し、覚三の『茶の本』と六角堂との関係について考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①岡倉覚三と岡倉由三郎の英文著作の比較・分析と論文執筆については、拙論「岡倉覚三と岡倉由三郎の英文著作をめぐって―The Book of TeaとThe Japanese Spiritを中心に」『日本比較文学会東京支部研究報告』11、2014)を発展させ、「茶」という視座で、彼らの英文著作五冊作を同時に照射し、考察する論文を執筆中である。
②資料調査とデータベース化については、茨城県天心記念五浦美術館、ボストンの関連施設が収蔵する資料調査を行った。茨城県天心記念五浦美術館において、岡倉覚三没後の岡倉由三郎と日本美術院同人との交流を示す書簡を発見し、翻刻した。成果の一部を平成28年度『五浦論叢』第23号(茨城大学五浦美術文化研究所)において掲載予定である。また、ボストンの関連施設において再調査を行い、岡倉由三郎の滞米時の活動に関する新資料を発掘した。
|
今後の研究の推進方策 |
①岡倉覚三と岡倉由三郎の英文著作の比較・分析と研究発表については、本年度の研究結果を踏まえて、美術と言語に関する記述の比較・分析を試みる。覚三は美術、由三郎は言語をテーマに、それぞれ「日本」を論じた。異なる専門領域からの切り口にもかかわらず、両者が提示した特徴には、絵画や俳諧における「暗示」のように共通点がある。次年度は、美術と言語という分析視座から、二人が「日本」をどのように捉え、論じたのかを比較して考察する。平成28年度中にここまでの研究成果をまとめ、単著を出版する予定である。
②資料調査とデータベース化については、本年度に引き続き茨城県天心記念五浦美術館において調査を行う。次年度は書簡の翻刻と、英文資料の翻訳を集中して行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
関連施設における調査後には、資料の翻訳や筆耕の専門家などの研究協力者に対して謝金を支払うことが想定されたため、謝金を計上したが、本年度は協力者への依頼を見送ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度実施した現地調査を基に研究をすすめるため、資料の翻訳や筆耕の専門家などの研究協力者に対して謝金を支払う予定である。
|