平成29年度は、平成28年1月に出版した単著『洋々無限 岡倉天心・覚三と由三郎』(里文出版)の成果を踏まえて①さらなる資料調査、および②研究成果の社会発信に取り組んだ。 ①資料調査:9月20日から同月24日までイタリアにおいて岡倉由三郎が訪問したキヨッソーネ東洋美術館、岡倉覚三が欧州視察日誌に記録したサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会、ポルディ・ぺッツォーリ美術館、ウフィツィ美術館などを訪ね、資料調査、美術品の実見、学芸員との意見交換を行った。 ②研究成果は、書籍、講演、論文、展示などを通して社会へ発信した。 書籍は近代茨城地域史研究会編『近世近代移行期の歴史意識・思想・由緒』(岩田書院、H29年10月)を出版し、「岡倉覚三の明治維新観―世紀転換期における『日本』の語り―」を執筆した。また平成28年9月開催「国際岡倉天心シンポジウム2016」の記録報告集『岡倉天心 五浦から世界へ―茨城大学国際岡倉天心シンポジウム2016』 (思文閣出版、H30年1月)を刊行した。 口頭発表は、平成29年11月インドネシアのジェンドラル・スディルマン大学にて基調講演「岡倉覚三の思想と生涯」を行った。同月、茨城大学で開催された企画展「岡倉天心(覚三)の遺産展vol.2」では展示品やキャプションに研究成果を反映させた。この会期中に開催された「茨城大学土曜アカデミー:岡倉天心セミナーvol.2」では「新著を語る:洋々無限 岡倉天心・覚三と由三郎」を講演した。このほか「世界のなかのKakuzo Okakura」(「岡倉天心セミナーvol.1」H29年7月)、「岡倉天心と弟・由三郎をめぐって」(五浦日本美術院岡倉天心偉績顕彰会「天心忌セミナー」、H29年9月)などで発表した。論文は 「五浦の10年を考える―岡倉覚三(天心)と日本美術院の五浦時代」(『茨城県近現代史研究』1号、H29年4月)を発表した。
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