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2017 年度 実施状況報告書

1940年代前半期朝鮮における金鍾漢の二重言語創作と「国民文学」の展開

研究課題

研究課題/領域番号 15K02453
研究機関新潟大学

研究代表者

藤石 貴代  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20262420)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード金鍾漢 / 国民文学 / 国民詩 / 詩と詩人 / 愛国詩
研究実績の概要

本研究の目的は,1940年代前半期の朝鮮半島で唯一,発行を許可された月刊文芸誌『国民文学』(1941.11~1945.5通巻39号)誌の編集者であった金鍾漢の「国民文学(論)」を,日本帝国主義に対する抵抗か屈従(親日)かの政治的二項対立からの評価ではなく,朝鮮文人たちの朝鮮(語)文学存続のための試論として捉え直し,その内容と変化を明らかにすることである.2015年度から2016年度にかけては,在朝日本人作家(則武三雄)による同時代評に着目したが,2017年度には,「国民文学(論)」の存立が朝鮮半島に限定されるものでなく,日本内地の「地方」においても,変革を余儀なくされる戦時体制下の文学運動として把握された例を,戦前・戦中・戦後を通じて新潟で発刊された詩誌『詩と詩人』の調査により確認した.地方から大政翼賛会や放送局に「献納」された「愛国詩」の朗読運動に着目し,日本放送協会編『愛国詩集』(1942年)等に掲載された詩篇の調査を行った.調査の過程で,『詩と詩人』編者の浅井十三郎が,「愛国詩運動」としての「朝鮮の“國民詩歌”」に関心を持っていたことが明らかになった。『国民詩歌』は朝鮮文人報国会の機関誌であり,後に(1944年10月)『国民文学』と同じ発行所から『国民詩人』として刊行されることになる.2015年度に,『国民文学』主幹であった崔載端(1908-64)の恩師であり,英文学者で詩人の佐藤清(1885-1960)と浅井十三郎との交流を指摘したが,両者の接点をあらためて確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

『詩と詩人』については,国立国会図書館に創刊号(1939年6月)より99号まで,新潟県立図書館に通巻24号(1942年1月)より111号(1956年6月)まで所蔵されており,うち50号分を調査済みである.

今後の研究の推進方策

「地方文化の展開のために」『詩と詩人』(1942年1月号),「時評民族詩の第二段階」『詩と詩人』(1942年2月号)等において,浅井十三郎が「大東亞戰爭前後の短時日を劃して國民詩の興隆は誠に喜ばしい現象であつた。」「(前略―引用者註)『人間像』の創造については新たな倫理と生活の能動的性質言ふならばその意志と目的を失ふことなき人間のその『場』に沈潜する必要を感じるのである。」と述べていることは,「新しき史詩の創造」(『国民文学』1942年8月号)を主張した金鍾漢との比較において,注目に値する。引き続き,『詩と詩人』の調査を進め,日本「内地」と「外地」における「国民文学」の展開過程を,当時の同時代的な文学運動として跡付けていく.

次年度使用額が生じた理由

(理由)
戦前期の詩誌については,大学図書館・公共図書館を始め,国立国会図書館にも所蔵されていないものが多く,古書購入に頼らざるを得ない.流通状況を頻繁に確認し,2017年度時点で出品された古書は購入したが,入手できなかったものもある.
(使用計画)
国立国会図書館に所蔵されている『詩と詩人』について調査を継続し,未所蔵のものは古書購入に努める.併せて,韓国の研究論文入手においては,有料化が進み,修士・博士論文の公開を除き,提携(契約)外図書館からの閲覧が難しい.朝鮮総督府図書館旧蔵資料(国立中央図書館)の閲覧を含め,現地調査を実施したい.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 愛国詩と史詩2018

    • 著者名/発表者名
      藤石貴代
    • 学会等名
      <声>とテクスト論教育研究センター(新潟大学)

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公開日: 2018-12-17  

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