研究課題/領域番号 |
15K02456
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 卓 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70161495)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ボードレール / ボードレール受容 / 比較文学 / フランス文学 / フランス文化 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、その前年度に行った研究を踏まえ、大正期から戦前昭和期のボードレール受容を中心に研究を行った。またボードレール受容の背景となるフランス文化一般の受容に関しても幅広い調査を行った。 まず、平成28年5月には、同年2月に富山大学で行われた国際シンポジウム「ラフカディオ・ハーン研究における新たな視点」において発表した成果をもとに、「ラフカディオ・ハーンとボードレール」というタイトルの論文を「言語文化共同研究プロジェクト2015」『表象と文化XIII』に掲載し、ハーンにおけるボードレールの影響の全体像を提示することができた。 同年6月25日には、大手前大学交流文化研究所に招かれ、「宝塚歌劇の海外公演をめぐって―戦前から現代まで」と題して講演を行い、宝塚歌劇における独特のフランス受容とそのイメージ形成および発信について中心的に論じた。 また同年11月3日には、Dominique Chateauドミニク・シャトー、パリ第1=パンテオン・ソルボンヌ大学名誉教授を招いて、Charles Baudelaire et l’art moderne「シャルル・ボードレールとモダン・アート」のタイトルでの講演会を企画・開催し、通訳を行った。本講演会において、ボードレールの近現代芸術への寄与を中心に議論が深まり、それを介したボードレールの日本における受容についての方向性も示された。 さらに、平成27年度、アメリカの国際学会で発表した成果をもとに書いた論文”Perspective on Baudelaire’s Reception in Japan from the Meiji Era to the Present”が査読の上、本年度に至りVanderbilt大学の学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年5月に刊行した論文「ラフカディオ・ハーンとボードレール」では、従来断片的にしか論じられてこなかった本テーマについて、全体的な見取り図を提供するとともに、ハーンを経由してボードレールが日本に受容された可能性を探求する方向性を見出すことができた。 同年6月25日に大手前大学で行った講演「宝塚歌劇の海外公演をめぐって―戦前から現代まで」では、ボードレール受容の背景となるフランス文化の受容と変容に関し、宝塚歌劇を通してその一端を明らかにすることができた。 同年11月3日のドミニク・シャトー、パリ第1=パンテオン・ソルボンヌ大学名誉教授の講演会Charles Baudelaire et l'art moderne「シャルル・ボードレールとモダン・アート」では、ボードレールがフランスの近・現代芸術を通して日本へと受容された可能性について示すことができた。 以上より、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた成果を踏まえながら、研究対象を第二次世界大戦後の日本の文化へと拡げていくが、同時にこれまですでに研究した内容についてもさらに充実したものとするべく、考察を深める。とりわけラフカディオ・ハーンについては、富山大学の中島淑惠教授や内外のハーン研究者と協力しつつ、引き続き富山大学が所蔵する資料の調査にあたる。 また、これまでと同様、ボードレール受容の背景となるフランス文化一般の受容についても、文学だけにとどまらず、芸術や演劇・映画、さらには消費文化といった領域も射程に入れつつ、同時に研究を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、予定していたフランスへの調査旅行にかえ、パリ第1=パンテオン・ソルボンヌ大学名誉教授のドミニク・シャトー氏を招聘し、講演会を開催したが、氏がすでに他の日本の大学から旅費・滞在費等を支給されていたこともあり、当初予想された支出額が大幅に減じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
内外の資料調査をより活発に行うための旅費および調査費に充てる。
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