本年度は本研究課題の最終年度であることから、本研究に関する調査の過程で看過されてきた資料がないかどうか、分析のプロセスにおいて不備等がないかを再度確認した上で、得られた成果を整理し、全体の総括を試みた。 本題である日本におけるボードレール受容に関してのみならず、並行してその背景となるフランス文化一般の受容についても、文学だけに限定することなく、芸術や演劇・映画といった関連領域を視野に入れつつ、研究を進めた。 まず、令和元年5月、これまで行ってきた自らの研究をひろく表象文化の研究のなかに位置付けることを目的として、申請者自身が研究代表者として編集にあたってきた『表象と文化』の第16号(大阪大学言語文化研究科「言語文化共同プロジェクト2018」)に、「『表象と文化』の16年」と題する論考を発表した。また、令和2年1月には『ひろがるフランス文学』(永井敦子、畠山達、黒岩卓 編、ミネルヴァ書房)に収録される「宝塚歌劇とフランス文」と題する論考を提出した。同書は本年9月に刊行される予定である。さらに令和2年3月には、共編著『増補版フランス文学小事典』を朝日出版社より刊行した。 本研究で得られた成果をもとに、日本におけるボードレール受容の特性を中心に、令和2年3月に専門分野の研究会にて発表する予定であったが、新型コロナウィルス流行防止対策のため、研究会自体を中止せざるをえなかった。情勢が鎮静化した折には、まず口頭にて概要を発表し、ついで研究誌、学会誌にその成果を順次公表していく所存である。
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