研究課題/領域番号 |
15K02460
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研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
大竹 聖美 東京純心大学, 現代文化学部, 教授 (60386795)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 朝鮮 / 童謡 / 詩 / 近代 / 韓国 / 植民地 / 児童文学 / 児童文化 |
研究実績の概要 |
韓国の童謡、童詩の系譜研究に関して、「日本における朝鮮・韓国の詩(子守歌・童謡・童詩)の受容」として、台湾台東市の台東大学で開催された第13回アジア児童文学大会(平成28年8月11日~15日)において発表した。ここでは、特に日本で受容された韓国の童謡・童詩文学の系譜を整理している。金素雲の業績から始めて、子守歌、わらべ歌、それから、尹石重の植民地時代を背景とした童詩と、それらが日本に受容されるメディアである現代韓国絵本の特徴とその翻訳出版状況とその意味や役割について論じた。 また、日本における現在の韓国童謡・童詩文学の受容はもっぱら現代韓国絵本の翻訳出版に依拠している状況から、現代韓国絵本を通して韓国童謡を論じ紹介する機会として、札幌地区子どもの本連絡会主催の講演会(札幌エルプラザ、平成28年10月9日)で「韓国の絵本の歩みとその歴史的背景」、公益社団法人青年海外協力協会主催の講演会(神奈川県立地球市民かながわプラザ、平成28年12月18日)で「韓国の絵本と文化」として、李元寿、崔順愛の童謡について論じることができた。 李元寿、崔順愛に関しては、特にその童謡が『オリニ』誌にて発表されたことから、『オリニ』誌ならびにその主幹であった方定煥研究が欠かせない。方定煥に関しては、継続して研究を行っており、今年度の成果は「新文化運動と方定煥――李相琴『小波・方定煥の生涯――愛の贈り物』に見る天道教青年会発足と『開闢』創刊」として東京純心大学紀要(『東京純心大学紀要 現代文化学部』第21号、平成29年3月)に発表した。 また、韓国の代表的童話作家である権正生の童詩「とうきび」に関して、翻訳絵本『とうきび』(童心社、平成28年6月)として刊行できた。児童文学研究では、実証的な基礎研究と合わせて、翻訳ならびに作家作品研究とその紹介も重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
韓国の童謡、童詩の系譜を研究しながら、同時に近代におけるその発表舞台であった『オリニ』誌とこの雑誌の主幹であった方定煥の研究を進めながら、研究計画設定時では想定できなかったキーワードが浮かび上がったことと、そのキーワードを元に新たに仮説を立て、論考を深めることができた点で計画以上に進展したと評価している。 文学史的な実証研究を主体に研究計画を立てていたが、今回の評論的考察の結果は、「韓国近代児童文学創成期における愛――方定煥の児童文学における愛」として、東京純心大学キリスト教文化研究センター紀要(『カトリコス』10号、平成29年1月)に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究活動の中で特に意義深かったのは、韓国出張時における韓国児童文学学会会員の研究者や韓国児童文学研究センターの研究者、方定煥研究所所長など、韓国における児童文学研究の第一線にいる研究者たちと一緒にソウル市内の史跡踏査を行ったことと、天道教資料室室長と面談し、情報交換できたことである。 今後も、現地研究所および研究者との交流を大切にし、最新の研究成果や情報を得るように努める。 また、平成29年度は、韓国昌原市で行われる「昌原世界児童文学祝典」にパネリストとして招聘され発表することになっている。中国の研究者とも討論できる予定なので、この機会に、東アジアの児童文学の動向を把握しながら研究を進めていきたい。
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