稲作・仏教・大和政権以前の「先住民」は従来歴史学で扱われ、近年の縄文文化への注目や「縄文人と弥生人」といった形で一般的に関心が持たれてきた問題である。本研究はこの問題を近現代文学・文化研究に取り込み、文学研究と柳田国男(民俗学)を接続して新しいテクスト解釈を試みた。本研究が諸テクストから抽出した、逃亡が難しい孤島の先住民が外来の政治・宗教・テクノロジーに対して取る態度―恭順・帰順・面従腹背・殉死―や、人間以外の存在―自然・動植物・霊・神・妖怪―との協同関係は、ポストコロニアル論・ポストヒューマン論の重要な論点であり、環境・AI問題における現代人の想像力の問題と繋がる。
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