研究課題/領域番号 |
15K02468
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
甲田 直美 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40303763)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自然談話 / 会話 / 音声特徴 / 言い切り形 |
研究実績の概要 |
自然談話における「音声文法」構築のための基盤として、自然談話資料から抽出した談話標識の音声特徴の精密な転写の積み重ねと、その分析を行った。自然談話の中でも、接続詞と接続助詞が、会話の構造(話の重複、会話の開始と終結、フロア概念)において、どのような役割を担っているか、会話の構造と音声情報に基づいた接続表現との関わりについて考察した。自然談話における言いさし、言いよどみ、オーバーラップ、言い誤り、倒置等の現象における談話標識の機能を整理した。接続表現は、発話単位間を関係づけ、文脈を形成するものであり、自然談話内での情報の受け渡しや思考の連鎖を考察するに有効である。自然談話における接続表現の使用については、これまでの日本語の文法論等における接続研究の蓄積があり、各接続表現の特徴を考察する参考となった。また、自然談話における語りにおける接続表現について音声特徴を分析した。日本語の自然談話内において、述語は節連鎖等、明示的な終了の形をとらずに、繰り返し用いられる。この中にあって、述語言い切りが談話環境の中でどのような機能を果たすのか分析した。言い切り形は、話者による主体性を覆い隠したかのような、述語の素材的表示という特徴をもち、相手発話の再利用や、相手発話の受領、引用、相手発話の補充、発話の訂正に用いられる。また、話し手と聞き手の知識量の違いに言及しない性質から、事態の客観的提示に用いられる。情報の相対的所有度など対人関係の表示が多い日本語の会話表現において、言い切り形が果たす機能を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は、おおむね順調に進展している。よい点としては、自然談話の音声特徴について、談話標識を中心に分析を進めているのだが、観察対象の絞り込みが進んだ点である。自然談話を観察する際には、談話標識や接続表現に加え、述語表現の観察が必須となるため、今年度は述語末の観察にかたよった点もあった。
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今後の研究の推進方策 |
談話標識と音声特徴との関連について考察を進める。現在、6月にJSLS2016で発表が決定しており、11月に英語学会での発表も決定している。他に現在応募中のものが2件あり、今年度4本の発表を予定している。論文についても現在校正中のものもふくめ、公表を続けていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
談話標識の音声分析についての先行研究として、日本語を対象としたものが非常に限定されていたため、談話標識の分析の整理は行ったが、談話標識自体の音声分析について、十分な観点が当初、見通しがたたず、海外での発表を行わなかったため、使用額が予定を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は海外での研究発表にもすでに投稿しており、旅費が必要なため、昨年度の未使用分と併せて計画的に使用することが可能である。
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