研究課題/領域番号 |
15K02470
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
西山 國雄 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (70302320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文法化 / 機能範疇 / ラマホロト語 / 一致 / 所有名詞 / 動詞形態論 / 助動詞 / 言語接触 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語接触による統語変化のメカニズムを理論的に明らかにすることを目的とする。これを遂行するため、29年度はこれまで行ってきたラマホロト語の助動詞の研究を発展させ、状況判断(evidentiality, ‘seem’の意味に相当)の助動詞の分析を行った。ここで特徴的なのは、補文の主語の位置で復元代名詞(resumptive pronoun)の出現が主語上昇の軌跡(痕跡)を示すと考えられ、複文の構造が動機付けられることである。また、近隣のムナ語では複文構造が一致(agreement)によって明示される。主語上昇があると思われる主節(助)動詞は、補文の主語と一致を示すが、主語上昇がないと思われる主節(助)動詞は、デフォルトの3人称単数の一致が出る。これは、一致が複文構造の種類(上昇構造か否か)を明示していると分析できる。代名詞と一致は文法化の過程で密接に関連していて、ラマホロト語とムナ語を含む東インドネシアの言語が、パプア言語との言語接触の影響を受けている部分である。これまでの研究で、助動詞の位置がパプア言語の影響を受けていることはわかっているが、助動詞を含む複文構造が反映される方法として、代名詞と一致の2種類があることは興味深い。言語接触の状況の違いが要因かどうか、まだ不明であるが、もしこの可能性があれば、言語接触による統語変化に新たな示唆を与えることになるので、引き続き研究を継続する。これらの成果は28年度に刊行した開拓社の論文集の続編に掲載予定である。 もう1つ、言語接触とは直接関係はないが、日本語の句複合の論文を英語で発表した。ここでは形態論と密接に関わった統語変化を扱っており、この本研究につながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究であるラマホロト語の所有名詞の研究が完成し、出版のめどがついた。またラマホロト語の助動詞の研究を発展させ、関連する言語の状況判断の助動詞まで拡大する見通しがついた。
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今後の研究の推進方策 |
パプア言語との言語接触が東インドネシアの言語に与えた影響について、引き続き考察を行う。助動詞の位置が影響を受けていることはわかっているが、助動詞を含む複文構造が反映される方法として、なぜ代名詞と一致の2種類が存在し、それが言語接触の状況の違いが要因かどうか、そうならどの言語のどんな影響があるのかなどを研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたより図書の金額が安かったため、若干の残金がある。これは来年度図書費として使い切る予定である。
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