研究課題
本研究課題は、個体間の関係としての「所有」概念と「所在」概念のオーバーラップの可能性を批判的に検証しつつ、存在論的(ontological)に異なる両概念が、文的表現レベルで個体-状況間に適用される関数HAVEの作用を介して文脈や世界知の中に位置づけられることで、両概念の言語表現上の類縁性に帰着することを通言語的に明らかにすることを目的にしている。実態としての連続的現象を語彙分解の手法で再構築しようとする点で、言語研究における構造主義と認知主義との接点を探る試みである。日・英・独語を対照しつつ、主に (1)「所有」・「所在」を表す名詞句の内的構成、(2) 措定的コピュラ文との範列性、(3) ヴァレンス拡大、(4) 文の主題という観点からアプローチを進めているが、2017年度は引き続き (3)(4) に取り組むとともに、総括となるワークショップを実施した。代表者・藤縄は、(3) の関連では外部所有表現と呼ばれる日独語の表現をいま一度見直し、述語部分が動詞によるのか、名詞・形容詞によるのかというこれまで見逃されていた要因が日独語ともに関与的であるという事実を発掘した。また、(4) に関連して、述語の動詞性・非動詞性にコトの所有かモノの所有かという対立が相関することで、従来「主題」として大括りに捉えられてきた外部所有者の機能に「事態を把握するための立脚点」に対する「把握した事態の中の着目点」という対立がもたらされることも明らかにした。さらに、協力者・高橋と連携し、ドイツ語において「潜在的使役主」の解釈を受ける所有者の与格表現を分析した。分担者・今泉は、(4) について「発表」「稽古」「演出」「振付」などの事象名詞が、依頼述語「お願いする」の目的語として生起した際にこれらの事象名詞の意味上の主語が曖昧性を帯びるしくみについて研究発表した。
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Linguistische Berichte Sonderhefte
巻: 24 ページ: 15-40
Deutsche Sprache - Zeitschrift fuer Theorie, Praxis, Dokumentation
巻: 45(4) ページ: 362-377