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2016 年度 実施状況報告書

語りの構造化・反復・共話を可能にするナラティブ・リアリティの認知的解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K02474
研究機関山梨大学

研究代表者

仲本 康一郎  山梨大学, 総合研究部, 准教授 (80528935)

研究分担者 岡本 雅史  立命館大学, 文学部, 准教授 (30424310)
加藤 祥 (保田祥)  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, 研究員 (40623004)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード認知言語学 / ナラティブ / 物語標識 / 相互行為 / 反復
研究実績の概要

まず、代表者仲本は、物語を構造化する言語表現として、昨年度に実施した日本語の感情表現に関する考察を形容詞全般に拡張して考察を行った。この成果は「形容詞―言語類型論と認知言語学からの眺め」として、山梨大学教育学部紀要第25号に掲載された。また物語の構造化に内容の役割が重要であることから、物語に一貫性を与える語彙のネットワークの構築を試みている。その成果は「認知言語学研究」第4号に投稿される予定である。
次に、分担者岡本は、「怪談」という具体的なナラティブ場面においてどのようにジェスチャー視点が使い分けられているかの分析を行う一方、コミュニケーション研究そのものが論文の読者や研究の受け手に対してどのように語られており、その背後にどのようなメカニズムが潜んでいるかを共有基盤とその更新の観点から分析を行った。それらの成果は、それぞれ、第39回社会言語科学会、電子情報通信学会HCS&VNV合同研究会、および第38回社会言語科学会ワークショップで報告された。さらにナラティブに不可欠なメタコミュニケーションを理論的に再考すべく、Batesonのメタコミュニケーション概念やGoffmanのフレーム概念を認知語用論的に捉え直し、新たなメタコミュニケーション研究の枠組みを示唆する論考を執筆し、『社会言語科学』に採録されるに至った。
最後に、分担者加藤(保田)は、物語に重要な要素が何であるのかを中心に調査を行った。小説本の帯データの分析を行い、短文から取得可能な物語要素を調査した。この成果は、第38回社会言語科学会で報告した。さらに、物語の異同における読み手の印象判断の根拠を確かめるため、部分改変テキストを用いた実験を行い、この成果を第39回社会言語科学会で報告した。また、これまでに収集した物語作文の比喩表現に着目した調査結果を、6th UK Cognitive Linguistics Conferenceにて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度からの考察により、ナラティブを構造化する要因として、マクロな展開を示す物語標識とミクロな談話内容を構成する語彙が複雑にからみ、その両者に配慮しなければ、ナラティブ・リアリティが成立しないことがわかったので、昨年度に引き続きこれら二つの作業を代表者仲本が並行して行っている。一方、ナラティブの認知語用論分析に際してナラティブ・データの書き起こし作業が必要となるが、分担者岡本とともにその作業に従事していた研究協力者の退職により当該作業の遅滞が生じた。その代わりに岡本はナラティブの認知語用論分析のフレームワークとなるメタコミュニケーションの理論的考察を進めており、最終年度にデータ分析との統合が図られる予定となっている。さらに、ナラティブの反復可能性については、読み手の「同じ」という判断に揺れが生じることがわかった。現在、分担者加藤が、物語の等価性を保証する基盤について、文法的な要素や表現などのレベルに注目して調査を進めている。

今後の研究の推進方策

これまでの成果から、ナラティブを構造化する要因、語りにリアリティを与える要因が、複雑であるとの知見が得られている。そのためこれら諸要因の分析に時間がかかり予定よりも遅れている。ただ、このような複雑な諸要因を無視することなく、理論化を試みることは、ナラティブの実証的なモデルを構築するうえで不可避である。本年度も引き続き、ナラティブの実態に即した考察を進めていこうと考えている。具体的には、ナラティブ・リアリティを成立させる要因として、物語標識という表層的な言語表現に加え、物語内容に基づくテーマ構造、さらに他者との相互行為に着目した考察を進めていき、これらを被験者実験などによって実証的に分析を行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

分担者岡本に関しては、研究実施初年度より談話テキストのトランスクリプション作業を担当していた研究協力者が28年度途中で退職し、データ整備が当初計画より遅れているためである。また分担者加藤については、実験協力者募集の開始が遅れたため、残額が生じた。各々トランスクリプション作業、作文課題実験を29年度に繰り越して実施することとした。

次年度使用額の使用計画

分担者岡本は、上記の理由により遅滞しているトランスクリプション作業の人件費に充当する。分担者加藤は作文の取得とクラウドソーシングを用いた実験の実施費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] 形容詞―言語類型論と認知言語学からの眺め2017

    • 著者名/発表者名
      仲本康一郎
    • 雑誌名

      山梨大学教育学部紀要

      巻: 25 ページ: 281-292

  • [雑誌論文] コミュニケーションの「場」を多層化すること―メタ・コミュニケーション概念の認知語用論的再検討―2016

    • 著者名/発表者名
      岡本雅史
    • 雑誌名

      社会言語科学

      巻: 19 ページ: 38-53

    • DOI

      http://doi.org/10.19024/jajls.19.1_38

    • 査読あり
  • [学会発表] 怪談の語りにおけるジェスチャー視点の選択2017

    • 著者名/発表者名
      伊田吏佐・岡本雅史
    • 学会等名
      第39回社会言語科学会研究大会
    • 発表場所
      杏林大学井の頭キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2017-03-19
  • [学会発表] 物語に重要な要素は何か2017

    • 著者名/発表者名
      加藤祥
    • 学会等名
      第39回社会言語科学会研究大会
    • 発表場所
      杏林大学井の頭キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2017-03-19
  • [学会発表] 課題達成対話の基盤化を実現する言語・非言語情報の多重指向性2016

    • 著者名/発表者名
      岡本雅史
    • 学会等名
      第19回日本語用論学会年次大会ワークショップ「対話理解と基盤化形成をめぐって:マルチモーダル・インタラクションの多角的研究」
    • 発表場所
      下関市立大学(山口県下関市)
    • 年月日
      2016-12-10
  • [学会発表] 恋愛小説において物語を特徴づける表現―タイトルと帯に見られる表現分析の試み―2016

    • 著者名/発表者名
      加藤祥・浅原正幸
    • 学会等名
      第38回社会言語科学会研究大会
    • 発表場所
      京都外国語大学(京都府京都市右京区)
    • 年月日
      2016-09-04
  • [学会発表] コミュニケーション研究の「語り方」:共有基盤の構築と更新に基づく対話可能性に向けて2016

    • 著者名/発表者名
      岡本雅史
    • 学会等名
      第38回社会言語科学会研究大会ワークショップ「理論研究再考―理論・モデルは社会言語科学にどう貢献するか?―」
    • 発表場所
      京都外国語大学(京都府京都市右京区)
    • 年月日
      2016-09-03
  • [学会発表] グランド・セオリーなきコミュニケーション研究を補完するものは何か?2016

    • 著者名/発表者名
      岡本雅史
    • 学会等名
      電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎合同研究会(HCS&VNV)
    • 発表場所
      立命館大学朱雀キャンパス(京都府京都市中京区)
    • 年月日
      2016-08-19
  • [学会発表] 'Man becomes a dog’ The difference between metaphor and simile in the corpus2016

    • 著者名/発表者名
      Sachi Kato
    • 学会等名
      6th UK Cognitive Linguistics Conference
    • 発表場所
      Bangor University,Bangor (United Kingdom)
    • 年月日
      2016-07-15

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公開日: 2018-01-16  

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