研究課題
研究代表者の塚本は,次のことを明らかにした。節連結の機能を果たす形式の1つに動詞連用形がある。この動詞連用形は,朝鮮語に比べて日本語の方が広範囲にわたって利用されており,朝鮮語における動詞連用形は,基本的には節・文レベルで用いられるのに対して,日本語における動詞連用形は,節・文レベルのみならず,語レベルにまで入り込んで用いられる。動詞連用形を用いた表現の1つに複合格助詞があるが,日本語で複合格助詞を用いて表現するところを,朝鮮語では同様に複合格助詞を用いて表現するのではなく,(A)接続語尾,(B)動詞連用形,(C)単一格助詞,(D)名詞,をそれぞれ用いるといった,複合格助詞とは別の方法で表現する場合が多く見られる。事態を叙述する際,単一格助詞を用いるだけでは,それが可能とならない場合があり,複合格助詞は,含んでいる動詞を利用し,それが有する意味で補うことによって,単一格助詞と,接続語尾あるいは動詞連用形による従属節との間を埋め合わせる機能を備えている。こういった機能を備えた複合格助詞を,日本語は朝鮮語に比べると,豊富に有しているが,朝鮮語においてその点がやや乏しくなっているのは,朝鮮語では単一格助詞と接続語尾あるいは動詞連用形による従属節に委ねられた表現が多用される結果である。この複合格助詞に関する両言語間の相違は,先に述べた動詞連用形の性質に関する両言語間の相違が反映されている。研究分担者の堀江は,次のことを明らかにした。奥津(2005)が日本語で指摘した,名詞修飾節が機能的に連用修飾節と近い振る舞いをする「連体即連用」の現象について,朝鮮語において考察した結果,朝鮮語でも同様の現象が確認できる。また,主節と従属節の形態統語論について,両言語を対照して考察した結果,主節と従属節が連続性をなしている証左となる現象は,朝鮮語よりも日本語における方が顕著に見られる。
すべて 2018 2017
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形式語研究の現在(和泉書院)
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Pardeshi, Prashant and Taro Kageyama (Eds.) Handbook of Japanese Contrastive Linguistics (De Gruyter Mouton)
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10.1075
Matsumoto, Yoshiko et al. (Eds.) Noun Modifying Constructions in Languages of Eurasia: Rethinking Theoretical and Geographical Boundaries (John Benjamins)
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