研究課題/領域番号 |
15K02482
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山村 ひろみ 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (90281188)
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研究分担者 |
渡邊 淳也 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (20349210)
GIBO LUCILA 上智大学, 外国語学部, 講師 (30737218)
鈴木 信五 東京音楽大学, 音楽学部, 教授 (40338835)
藤田 健 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50292074)
黒沢 直俊 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (80195586)
岸 彩子 埼玉女子短期大学, その他部局等, その他 (80749531)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロマンス諸語 / テンス / アスペクト / 対照研究 / データベース |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究の第1の目的である現代ロマンス諸語(ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ルーマニア語)のテンス・アスペクトの共通点と相違点を具体的に提示するための「データベース作成」に必要な素材を選択すると同時にその作成方法について検討し、実際にデータベースの作成に着手した。その結果、平成28年4月現在、素材として選択されたAgatha ChristieのMiss Marple and thirteen problemsの各言語の翻訳本のスキャナーでの読み取りを完了し、読み取りミス等のチェックを行っているところである。 次に、本研究の第2の目的である「各言語のテンス・アスペクトの体系の整理およびその比較・対照」については、本研究で用いるテンス・アスペクト形式の共通の名称を定めた後、スペイン語のテンス・アスペクトの定義とそのモデル文を基に、各言語のテンス・アスペクトの定義およびその定義が準拠する見方を整理した。その結果、対象5言語のテンス・アスペクトを比較対照する際の具体的課題としては、(1)「コメント世界」から「物語世界」あるいは「物語世界」から「コメント世界」のように「世界」がスイッチされる際のテンスの変化、(2) 話し言葉(「コメント世界」)における単純過去、複合過去、現在の振る舞い、(3)未来、近接未来の用法、(4)「もう少しで~しそうだった」といったタイプの未遂表現、(5)進行形などの迂言形式、などが設定されるだろうということになった。平成28年度には本年度に作成された「データベース」を用いて、これら5つの課題のいくつかの解明が試みられればと思う。また、上述の課題のほかにも、事件の概説を話す際に用いられるフランス語の「現在形」の用法や「時制の一致」といった問題もあげられたが、これらについては、関心を持つメンバーが個別に考察を行うことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は以下のように4回の打ち合わせを行い、本研究の実施計画をほぼ遂行することができた。 第1回(平成27年7月19日):メンバー全員が会し、データベース作成の素材を Agatha Christie のMiss Marple and thirteen problemsの各言語の翻訳本とし、それらをスキャナーで読み取った後、各言語担当者がデータにミスがないかをチェックすることにした。 第2回(平成27年9月20日):テンス・アスペクト形式の共通の名称を定めた上で、 各言語のテンス・アスペクト形式の定義とその定義が準拠する見方を確認することにした。そのために、研究代表者である山村がスペイン語のテンス・アスペクトの定義とそのモデル文を作成し、メンバーに送信、各メンバーはそれを参考にしながら、担当言語のテンス・アスペクトの定義、それが準拠する見方を整理することにした。 第3回(平成27年12月13日):第2回目の打ち合わせで確認されることになった各言語のテンス・アスペクト形式の定義とその定義が準拠する見方を山村が作成した「時制対照表」を基に一望した後、特に、興味深い現象を示すと思われる部分を指摘、議論した。 第4回(平成28年3月21日):まず、データベースのスキャンによる読み取りが終了したこが確認された。次に、第3回目の打ち合わせでの議論を踏まえた上で、対象5言語のテンス・アスペクトを比較対照する際の課題としては、(1)「コメント世界」から「物語世界」あるいは「物語世界」から「コメント世界」のように「世界」がスイッチされる際のテンスの変化、(2) 話し言葉(「コメント世界」)における単純過去、複合過去、現在の振る舞い、(3)未来、近接未来の用法、(4)「もう少しで~しそうだった」といったタイプの未遂表現、(5)進行形などの迂言形式、などが設定されるだろうということになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、以下のことを実施する予定である。 まず、5月に開催される日本ロマンス語学会の大会の統一テーマ「現代ロマンス諸語におけるテンス・アスペクト・叙法」のセクションにおいてメンバーが発表する。 次に、平成27年度に作成された「データベース」を用いて、まず、対象5言語における(1)「コメント世界」から「物語世界」あるいは「物語世界」から「コメント世界」のように「世界」がスイッチされる際のテンスの変化、(2) 話し言葉(「コメント世界」)における単純過去、複合過去、現在の振る舞い、を比較対照していく。 また同時に、各メンバーは自身が関心を持った課題(例えば、事件の概説を話す際に用いられるフランス語の「現在形」の用法や各言語における「時制の一致」のあり様)を検討していく。 さらに、「データベース」を有効に利用するための方策を専門家に尋ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、データベース作成のための「人件費・謝金」の額が予想以上に安価だったこと、また、研究代表者である山村の旅費が予想以上に安価だったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
当該助成金は本年度の成果発表のための旅費、また、本年度作成されたデータベースの有効な利用方法に関するレビューを専門家に受ける際の「人件費・謝金」等に使用する計画である。
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