研究課題/領域番号 |
15K02486
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
森田 久司 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (30381742)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | intervention effects / pied-piping / quantity questions / pair-list readings / Q-particles / coordination / perspective / logophor |
研究実績の概要 |
平成28年度の4月から8月は、1年目からの研究成果として、国際ジャーナルにおいて投稿していた論文が受理された。残りの期間は、ほぼ在外研究期間と重なり、海外で過ごした。その間は、研究に没頭でき、また、研修先で新たな知見に触れられたこともあり、新たな研究トピックがいくつか生まれたことは、とても有意義であった。 具体的に、前半はアメリカのボストンのMIT/ハーバード大学で研究を行い、本研究分野において著名な、Seth Cable氏 (マサチューセッツ大学), Norvin Richards氏(MIT)、Yimei Xiang氏(ハーバード大)との面談を通じて、研究内容を深めることができた。後半は、ノルウェーのトロムソ大学に籍を置き、Gillian Ramchand氏などと共同研究を開始し、興味深い現象が発見でき、継続中である。 また、研究内容をMITおよびトロムソ大学で発表する機会を得た。MITでは、本研究から派生した新たな研究分野で、名詞句の接続詞について、日本語と韓国語の比較を公に初めて発表した。初めての発表にもかかわらず、高評価を得ることができ、これを基にした発表を平成29年6月末に、ヘルシンキ大学の韓国語の国際学会で発表する予定である。 トロムソ大学では、本研究の中核的トピックである、日本語とシンハラ語の潜在的WH移動について発表を行い、Gillian Ramchand氏、Peter Svenonius氏(トロムソ大学)、Tarald Taraldsen氏(トロムソ大学)などより、高く研究内容を評価してもらうとともに、貴重な意見や指摘をいただいた。この研究については、現在、論文をジャーナルに投稿中である。また、関連したトピックについて、内容を発展したものを平成29年6月初旬に台湾の中央研究院で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目からの研究内容として、WH疑問文において、ある種の語句が疑問詞の前に置かれると非文、又は解釈に制限を及ぼす、インターベンション・イフェクトがあるが、本年度は、研究対象を日本語・シンハラ語・韓国語から、英語・ドイツ語・中国語・トルコ語に対象を広げた。いずれの言語も、主節においてインターベンション・イフェクトを示すが、埋め込み節(特に島と呼ばれる節)内において、言語間に違いが見られることがわかった。英語・ドイツ語・中国語・トルコ語などでは、同現象が主節同様に観察されるのに対し、日本語・シンハラ語・韓国語などでは見られないことがわかった。これから、疑問詞が埋め込み節にある場合の統語的処理方法が二つのグループで異なっていることがわかる。Kotek (2014 MIT dissertation)に見られるよう統一的な説明ではうまく説明できないことが分かったのが大きな発見である。これについて、平成29年6月台湾で研究発表する。 もう一つは、日本語・シンハラ語のWH疑問文における、数量疑問文についての研究である。在外研究先で受けたハーバード大学での疑問文の意味についての講義が非常に有効で、形式意味論的側面を強化することができた。この研究については、既にジャーナルに投稿した。 以上より、研究課題はおおむね順調に進展していると言える。ただし、海外拠点ということで、学会にはあまり応募できなかった。次年度は学会での研究成果発表をもっと行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、既に学会発表が二つ決まっており、それについて準備を行い、貴重な意見や指摘をもとに論文に発展させることを目標とする。 台湾での発表では、インターベンション・イフェクトを統一的な方法で説明することができないことを示し、新たな提案を行う予定だが、その後、研究対象言語を増やして、自論を支持するデータを集めるか、自然言語におけるWH疑問文の類型論的な考察に入りたい。 ヘルシンキ大での発表では、日本語と韓国語の名詞句接続であるが、共通点と相違点を明らかにしたうえで、違いを統語的に説明する予定である。この先の可能性として、日本語・韓国語で得られた分析方法が、英語のboth andやeither orの分析にも応用できるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は在外研究と重なり、一年のほとんどを海外で過ごしたが、その期間中に物品を購入したり、海外の学会に参加するための航空券を購入するのが困難が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度に関しては、6月に二つの国際学会(ヘルシンキ、台湾)で発表が決まっており、それらの旅費に充てる予定である。また、夏以降にも国際学会での発表に選ばれれば、その旅費にも充てたいと考えている。
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