本研究は、先の若手研究(B)『文法性判断のずれ及びぶれの発生メカニズムの解明および解消方法』(課題番号24720181)の発展として行われた研究で、3つの分野において研究が進行した。 一つ目は、日本語とシンハラ語のWH疑問文の統語的・意味的分析に関して、大きな進展が見られた。具体的に、インターベンション効果が本来出現するはずの状況で観察されない環境が日本語とシンハラ語で同一であった(例 WH島を除く島、how many/much NPなどの数量疑問文)。この発見から、両言語とも疑問詞が島の中にある場合には、島ごとWH移動(Pied-piping)が起こるとの主張を支持することができた。これに関しては、海外雑誌(JEAL)に投稿中で、既に査読者からコメントを頂き、修正中である。 二つ目は、名詞句接続詞の「か」と「も」について、研究が進んだ。この点についても日本語とシンハラ語は似ており、疑問詞に「か」または「も」をつけると数量詞に変化する。両言語とも、それらを名詞句接続に使用できるところも同じである。本研究では、韓国語のケースも含めて、名詞句接続詞の統語的・意味的構造を明らかにした。最終年度に、ヘルシンキの韓国語の学会で発表し、大学院の紀要で論文となっている。 最後に、インターベンション効果自体について、ドイツ語と英語において、他の研究者(Kotek and Erlewine 2016など)が本研究と異なる分析をしているが、それと比較をし、それらの主張は日本語やシンハラ語に適用できず、そのことから、疑問詞が島内にある場合の解決方法は言語間で異なりうることがわかった。このことについては、最終年度に、台湾で口頭発表し、学部の紀要に投稿した。
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