研究課題/領域番号 |
15K02487
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
小熊 猛 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (60311015)
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研究分担者 |
田村 幸誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (30397517)
金 智賢 宮崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40612388)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再帰的 / 内省的 / アンカーリング話者 / 再帰的自叙 |
研究実績の概要 |
「再帰性」(reflexive)、および「構文」に着目し、「発話場面の概念化」(speech-event conception)という観点に基いて、事態解釈とそれを反映する言語形式の研究を通言語的に進め、連携研究者と共に国際会議及びワークショップにて6つの研究発表を行った。その内の三つを以下に報告する。 本研究の根幹をなす理論的分析として、再帰的で内省的(reflectional) な構文が依拠する発話場面の語用論的要素を捉え、概念化の記述を試みた。一昨年に扱ったhave a walkという表現が帯びる「気晴らし」(再帰的受益者主語構文)の事態解釈が日本語で「Vテミル」として言語化され得るとする観察に端を発し、「V and see」という言語形式(複合述語)が日本語、韓国語、アイヌ語でどのような意味を担い得るかについて比較対照し、概念化の(脱)焦点化の差異として統一的説明が可能なことを示した。この研究の主たる分析は、国際会議(ICAL 2016[1])にて提案した。 構文レベルの事態解釈と言語形式という観点の研究成果として、従属節にのみ観察されるni格(与格)に着目し、国際ワークショップにて口頭発表し、これに通言語的観点から発展的分析を試みた研究成果を国際会議(ICAL 2016[2])で公にした。 また、ラサおよびアムド・チベット語の陳述・疑問文環境に観察される一見不可解なコピュラの分布パターンが、再帰的自叙(self-recounting) に根ざすアンカーリング話者(Anchoring speaker)として捉えられることを示し、日本語の再帰代名詞zibunの指示対象、更には副詞的機能を担う英語の懸垂分詞の一部の振る舞いも同様にアンカーリング話者に起因するとする主張を口頭発表として国際会議(AELCO 2016)へ提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の「再帰性」「心理的受益」などに関連する構文研究が順調に進み、国際会議においての6本の研究発表いう形で成果報告が実現しているため。
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今後の研究の推進方策 |
国際会議で発表した研究成果を論文としてまとめ発表する予定である。なお、発話場面の概念化という観点から日韓指示詞を対照し、従来の研究ではうまく扱えない日韓の振る舞いの差を取り上げ見直しを試みた研究成果を更にを発展させ、ダイクシス研究に新たな提案を行う準備をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
発展的検証にかかる認知実験の実施要領および手順の検討に時間を要したため、実験に用いるマクロ・プログラムの仕様書の準備、発注が2017年度での実施となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題からの発展研究の一つと位置づけている指示詞対照研究の検証実験を繰り越した研究費で実施する。なお、申請当初より予定している予算分で分担研究者および連携研究者との研究打ち合わせ旅費、国際会議での成果発表にかかる旅費、さらには英文論文として発表することに伴う英文校閲費用、投稿料を支出する。
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