研究課題/領域番号 |
15K02497
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鄭 惠先 北海道大学, 国際連携機構, 准教授 (40369856)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジャンル / キャラクタ / 翻訳字幕 / バラエティ番組 / スポーツニュース |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、メディア・ディスコースにおける制作者の意図的な言語的改変を、出演者のキャラクタ作りという側面から分析し、制作者がどのように視聴者の解釈を誘導しているかを明らかにすることである。そのために、初年度の27年度は、バラエティ番組の文字テロップを分析対象とし、制作側のディスコース操作によるキャラクタ構築の一端を解明した。また、2年目の28年度はこれまでのアプローチとは異なる新たな視点を取り入れ、従来の理論的コミュニケーション研究の概念や用語を用いてメディア・ディスコースの生成過程を説明しようと試みた。この方向性は今後も継続して維持していきたいと考えている。よって、3年目の29年度は「映像メディアのジャンル、翻訳上の問題点、日本語と韓国語の言語構造や表現の違いという3つの要素を有機的に関連づけて考察する」という、研究当初の考察の観点にもとづいた研究実績の総括と整理に力を注いだ。 その成果として、29年度には「スポーツ情報番組のジャンルによる語用論的特徴―日韓対照で見られるスピーチレベルシフトの相違に注目して―」という論文を公開した。本論文では、とりわけスポーツ情報番組の実例をもとに、ジャンルによる語用論的特徴について考察した。その結果、日本のテレビ番組の談話では番組独自のジャンル特性が言語表現に強く影響していることを明らかにした。たとえば、実況中継のアナウンサーの発話では、常体と敬体の混用が目立つ日本に対して、韓国では常に敬体のみが用いられる。また、報道性より娯楽性が重視されるワイドショーというジャンルは日本に特徴的に見られる映像メディアで、その中の談話はジャンル独自の語用論的特徴を持っている。このように、同じスポーツ情報番組であっても日韓の映像メディアには言語表現の違いが顕著に表れるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたとおり、今後の研究の方向性として、従来の理論的コミュニケーション研究や談話分析研究の手法を検討して積極的に取り入れて行こうと考えている。今年度は、そのための理論的な枠組みのレビューに想定以上に時間がかかってしまい、実際のデータの分析に取りかかる時期が大幅に遅れてしまった。 それにあわせて、 本務校での人員削減による担当業務の増加が影響し、相対的に本研究に取り組める時間が減少したことも主な理由の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を総括する意味で、現在もこれまでの研究成果を整理した論文を執筆、投稿中である。その中では、映像メディアのジャンルと日韓・韓日のメディア翻訳を有機的に関連付けて考察を行っている。 この推進計画とは別に、今後の本研究の領域拡充のために、29年度に引きつづき、これからは従来の理論的コミュニケーション研究やマルチモダル分析などの研究のレビューがさらに重要になってきており、過去の理論的枠組みをもとに本研究課題にあった新たな手法を見いだしていくことに力を注ぎたいと考えている。 この方向転換により、本研究の理論的な基盤を確立することができ、将来的に本研究領域のさらなる拡張に貢献できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校での予想外の人員削減の影響で、通常より担当業務が増え、相対的に本研究に取り組める時間が減少した。 さらに、本研究の理論的な枠組みのレビューに想定以上に時間がかかってしまい、実際のデータの分析に取りかかる時期が大幅に遅れてしまった。 そのため、最終年度までの成果発表の段階まで研究を進めることができなかった。
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