研究課題
29年度は、文末助詞ge2(音調の短いge2)の意味とその具体的な文法化プロセスを考察した論文を公刊した。論文では、まずge2は予期に反して成立する事態として命題を発話場に提出する意味を持つと定義し、続いてこれが名詞化標識ge3を用いた名詞化構造“X+ge3”に文末上昇イントネーションがかぶさった構文全体が再分析されたことにより文法化したものであると主張した。【雑誌論文1】次に、ge2と類縁的関係にあるもう1つの文末助詞gE2(音調の長いge2)を取り上げ、その意味と意味変化を考察した論文を公刊した。すなわち、gE2は当該の発話を、それと衝突する別の命題が存在するような命題として発話場に提出する意味を持つものと定義し、衝突命題が先行文脈と後続文脈のいずれにあるとみなすかで<異論>と<留保>という2つの異なる用法に分けられると主張した。そして前者から後者への用法の拡大を、対人やりとり的機能からテクスト/談話接続的機能という通言語的な意味変化の一例として位置づけた。【雑誌論文2】そのほか、名詞化標識から文末助詞への文法化という共通の現象を、日本語と広東語という系統・類型を異にする2つの言語間で対照すべく、まずは両言語の文末助詞という語類全体の言語横断的対照を行った。【雑誌論文4】一方で、広東語の文末助詞の様々な連鎖パターンを分析し直した結果、広東語では名詞化標識ge3に由来する文末助詞が既に接辞的な拘束形態素g-となっており、同じく名詞化標識に由来する文末助詞を持つ北京官話などと比べるとはるかに文法化が進んでいることがわかった。【雑誌論文3】このように名詞化標識の文末助詞への文法化については多くの知見が得られたが、もう1つのテーマである間投詞から文末助詞への文法化については、言語データを収集し、考察を始めた段階でとどまっており、今後、成果公開を行っていく必要がある。
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中國語文通訊
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ことばとそのひろがり ―島津幸子教授追悼論集―(「立命館法学」別冊)
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