研究実績の概要 |
研究課題は,言語の「自然さ」,「~語らしさ」というのはどういうことかについて理論化し,説明を試みるものである。すなわち,客観世界に対する事態認識の言語化,つまり,構文間の連関と対立の関係に反映される話者の事態認知上のカテゴリー化の動機づけを明らかにする。具体的には,人為的行為の結果状態を表す現象を対象とし,諸言語がどのような構文を用いるのが自然かを,母語話者から収集した用例と,同じ内容が各言語で翻訳されたパラレルコーパスによる用例収集をもとに検証する。また,使用された構文のあり方について意味と機能と構造の面から有機的・相関的に特徴づけて検証し,認知類型論の発展に資するとともに,その成果を外国語教育の現場へと還元することを目的とする。 研究方法としては, 1) 文献資料からの用例収集, 2) パラレルコーパスからの用例収集, 3) 母語話者への聞き取りによる用例収集, 4) 収集したデータの分析と意味地図の記述, 5) 母語話者への使用意識調査, 6) 認知様式や伝達慣習との関連性の分析・検証の 6段階の手続きによって行ってきた。4年目にあたる2018年度は,調査対象言語をエストニア語とトルコ語にしぼり,主に次の3点を実施した。 1 パラレルコーパスの電子化および用例収集-世界中に広く翻訳され,出版されている『ノルウェイの森』のエストニア語版とトルコ語版を入手し,電子化を行い,関連する構文を収集した。 2 理論的枠組みや言語現象の包括的整理-文献資料と,本課題でこれまで収集してきた人為的事態の結果の状態を表す各構文に関する記述的なデータの分類を行い,意味地図の記述を試みた。 3 日本語と韓国語とロシア語のパラレルコーパスを分析し,それぞれの認知類型論的特徴を明らかにした。その他,エストニア語,トルコ語の母語話者への使用意識調査の準備に着手した。
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