研究課題/領域番号 |
15K02502
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳田 優子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20243818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 示差的目的語表示 / 格体系の変化 |
研究実績の概要 |
本年度は,日本語の上代から中古に至る格体系の変化に関して,とくに,目的語の表示体系を中心に研究を行った.上代日本語には目的語はヲ格で表示する場合と無表示の2つの表示方法があることが知られている.いままで,無表示の目的語は格助詞「ヲ」が脱落したものであり,2つの表示体系は,単なる文体的違いであると言われ,無表示目的語の研究はほとんど行われていない.Oxford大学の海外研究協力者とのOxford Corpus of Old Japanese(OCOJ)を使用して,上代日本語の資料から当時の言語が類型的に現代日本語と異なるDifferential Object Marking (DOM)と呼ばれる格類型を持っていたことを実証的に示すデータを調査した.ヲ格で表示された目的語は「特定性」を表し,無表示目的語は非特定性を表すことをデータで検証した.コーパスでは,「ヲ」格で表示されない目的語の統語標識を付加する作業を行い,資料収集できたデータをもとに共同執筆を行い,本年度はLanguage Science Pressから発行されるStudies in Diversity Linguisticsで上代と中古のDOMについての実証研究を論文にまとめた.その他に研究代表者のDOMに関する言語類型的研究がJohn Benjaminsから著書(分担執筆)として出版される予定になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学業務が多忙である.また当初予定していた研究補助の適任者が見つからなく雇用ができていない,海外研究協力者の異動により,共同研究が遅れているなどの理由で,研究の進捗状況が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き,Oxford Corpus of Old Japanese, 国立国語研究所歴史コーパスを使用した,日本語における格体系の変化がなぜ起こったか,またどのように変化していったかを,理論的,実証的に研究をすすめる.とくに上代・平安時代の日本語の名詞化文中の主語の表示体系を中心に理論・実証研究を行う.なお,その研究をすすめるための歴史資料が膨大であり,資料整理のため研究補助員の雇用を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外共同研究の遅れ,また当初,研究補助員を雇用する計画であったが,適任者が見つからず,コーパスによる調査が実施できておらず,残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助員の雇用を予定しており,その人件費に残額をあてる.
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