本年度は,この研究課題による研究の締めくくりとして次の4つの研究と作業を行なった。 (1) 言語地図作成プログラムSeal Version 8.0の開発を引き続き行なって,1枚の地図を描くことに関してはほぼ完成させることができた。特に,従来,各地点の語形を記録した言語情報は特別の形式のテキストファイルに限定されていたが,これを,ユニコードのテキストファイルをそのまま扱えるように改良し,データを読み込ませるまでの手順が簡素化された。また,各地点に表示する記号を,色や形,大きさに関して,半自動で決めることが可能となり,地図作成にかかる時間を大幅に短縮できるようにした。但し,マニュアルについてはまだ暫定版にとどまっており,詳細な正式版の完成のためには今後も継続して作業を行なう予定である。 (2) 前年度に作成したPDF版の『小倉進平『朝鮮語方言の研究』所載資料による言語地図とその解釈 第1集』を,若干の修正を加えて冊子版の研究報告書として作成し,印刷を行ない,一部の研究者,研究機関への配布を行なった。 (3) 上の第1集の続編として,『小倉進平『朝鮮語方言の研究』所載資料による言語地図とその解釈 第2集』を作成し,PDF版として筆者のWEBページで公開するとともに,冊子版として印刷を行なった。 (4) 言語地図の解釈に必要な文献上のデータに関して従来不十分であった部分を補うため,東京大学文学部小倉文庫に所蔵されている中世韓国語の資料の中から重要なものの影印資料を作成し,解説を付けて『小倉文庫所蔵中世韓国語影印資料 第1集』として印刷した。これにより,今後さらに残りの項目について考察を進める際に,文献上のデータの確認作業を効率的に行なうことができるようになった。
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