研究課題
本研究ではボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ならびにこれと隣接したセルビア、クロアチア、モンテネグロなど同族語圏における言語状況を多角的に考察した。なおボスニア・ヘルツェゴヴィナは、現在もボシニャク人とクロアチア人を主体とするボスニア連邦と、セルビア人を主体とするスルプスカ共和国に分離されているが、これらの地域で話されている言語、特に標準語は、基本的に同じものである。まず人口動態および母語と民族的・宗教的帰属の関係について最新の統計にもとづき分析した。ボスニア全体で1991年時点から2013年の間で人口が2割減少し、ボシニャク人はボスニア連邦に、セルビア人はスルプスカ共和国に居住するという住み分けの傾向が顕著になっている。この状況は言語意識にも反映され、主要三民族のいずれにおいても、大部分が民族的帰属と母語を同一視する傾向にある。本課題研究では、こうした言語意識の変化とともに「標準語」への規範意識、標準語イデオロギーの問題について考察した。本研究ではまた、ボスニアとこれに連続するクロアチアやセルビアの中世における言語文化のあり方も考察した。ボスニアは15世紀以後オスマントルコの支配下に入ったが、内部では正教会やカトリック教会が活動を続けており、そこでは古いスラヴ文献が写され保存されていた。これらの文献は、中世ボスニアおよび隣接地域における言語状況や文化的連続性のあり方を研究する上で重要であると判明した。本課題研究ではさらに枠を広げ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、またこれと接するモンテネグロやクロアチアの近代における民法典の成文化と立法の言語という観点から、この地域の言語文化を考察した。とくに19世紀にモンテネグロのために民法典を執筆したV.ボギシッチの研究を分析し、彼がバルカン西部の言語を広く観察して法典執筆を行ったことを明らかにした。
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