本研究では、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの言語状況を、これと隣接するクロアチア、セルビア、モンテネグロのそれとあわせて共時的、また通時的に多角的に研究した。 ボスニアでは1995年以後国土がボスニア連邦とスルプスカ共和国に分断されたが、その状況は人口の住み分けを進め、住民の言語規範意識にもこの状況が反映されていることがわかった。 またボスニアを含む南スラヴ地域の中世文献の研究から、オスマン支配下にあったボスニアでも中世から近代に至るまで主に修道院などで南スラヴの文献文化が継承されていたことが明らかになった。この地域の文献は中世スラヴにおける言語変化と言語文化のあり方を知る上で重要である。
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