研究課題/領域番号 |
15K02506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辛 昭静 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 客員研究員 (40597192)
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研究分担者 |
石崎 雅人 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (30303340)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 異文化間コミュニケーション / 対人コミュニケーション / 丁寧表現の不使用 / 多文化共生社会 |
研究実績の概要 |
【研究目的】本研究では,丁寧表現不使用に対する日本人と韓国人の行動と意識の違いを探るため,日本人412名と韓国人421名を対象に,(1)話し手と聞き手という立場の相違が,丁寧表現の使用/不使用の選択と評価にどう影響するのか,(2)丁寧表現の使用/不使用の選択と評価に,会話の相手(日本人・韓国人/外国人),相手との関係(親/疎),表現への認識がどのように関係するのか,の2つの観点から調査を行った。その結果を分析し,韓国人が日本人との異文化間コミュニケーションで遭遇する困難を予測し、その解決策を提示することを目的とした。 【分析結果】(1)日韓ともに依頼する場合と依頼される場合で,丁寧表現使用/不使用の判断が異なっていることがわかった。つまり,依頼される場合には,丁寧表現の使用が選好されるが,依頼する場合には,相手と親しい関係にあると,丁寧表現の不使用が選好される。特に,依頼する場面において,日本人は相手(外国人か日本人か)よりも,相手との親疎関係をより重視して表現を選択する傾向がみられたが,韓国人は依頼する相手と相手との親疎関係,両方を考慮し表現を選択する傾向がみられ,違いをみせた。(2)丁寧表現使用/不使用の選択確率に関係する要因として「自然さ(違和感)」の認識が影響していることが明らかになった。「親しい人に依頼する」場合は,依頼者,被依頼者が日本人・韓国人か外国人かにかかわらず,丁寧表現使用に対する「よそよそしさ」の認識が表現の選択に影響する共通する要因として働いていた。 【本研究の意義】丁寧表現の不使用については,他の対人コミュニケーション場面においてさらに検討を重ねていく必要があるが,話し手と聞き手の立場による認識の違いがあることと,丁寧表現の使用/不使用への認識を分析することにより,少なくとも規範の意識に基づいた丁寧表現の不使用があることを示すことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第38回社会言語科学会では,日本人の結果をまとめて発表したが,そこでいただいたコメントを参考に,日本人と韓国人の傾向を比較する内容を論文としてまとめて,近々投稿する予定であるため,本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
①6月迄:論文完成・学会誌へ投稿 ②8月まで:追加インターネット調査を実施する。 ③10月迄:調査結果を分析し,学会で発表する。 ④12月迄:その内容を論文としてまとめて、学会誌へ投稿する。 ⑤翌年の3月迄:成果報告書のとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
・前回の調査の分析が終わったら、その結果に基づき、続きのインターネット調査を行う予定だったが、分析が間に合わず、新しい調査を行うことができなかった。 ・海外(韓国)での学会発表を予定していたが、スケジュールが合わず、発表できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
1.予算の総額:本年度の繰り越し分(79万円)+次年度の予算(60万円)=139万円 2.予算執行の内訳 ①調査(インターネット調査):60万円 ②出張(国外出張):29万円 ③機器(パソコン等):30万円 ④成果報告書印刷費:20万円
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