研究課題/領域番号 |
15K02508
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
黒沢 直俊 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80195586)
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研究分担者 |
野元 裕樹 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (10589245)
荻原 寛 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (20233447)
富盛 伸夫 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (50122643)
田原 洋樹 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (60331138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポルトガル語クレオール / スペイン語クレオール / マカオ / マレーシア / フィリピン / ベトナム / 言語接触 / フィールド調査 |
研究実績の概要 |
マカオ並びにマレーシアのポルトガル語クレオール語については,分担者の富盛が香港に出張し,香港教育学院教授Hintat Cheung氏から香港の多言語状況や少数言語話者についての研究情報を得た。マカオ大学准教授のMario Nunes氏と会談しポルトガル系言語の最新情報を得た。マレーシアのKristang語の伝承者Joan Marbeck等も加え今後の本科研の国際連携を協議した。代表者の黒澤はKristang語の研究資料や文字データの調査,検討に着手し,コーパスデータ化し,先行研究の記述と照合し言語運用の実際問題を洗い出す準備を始めている。 マレーシアの英語については,分担者の野元が使用状況調査の文献調査を行った。マレー語の英語起源語の発音を手がかりに、マレーシア英語の音韻的特徴を探った。 ベトナム語と欧州語の接触は,分担者の田原がハノイに出張し,グエン・ティエン・ナム・ハノイ国家大学社会科学人文大学ベトナム学部長とドイモイ以前からのベトナム語教育・研究の潮流に関し意見交換し,旧社会主義圏におけるベトナム語の位置づけを把握した。ハー・クアン・ナン・国家辞書学百科事典学研究院研究員とロシア語起源およびフランス語起源のベトナム語彙についての情報交換した。 こうした意見交換を通じ,研究テーマの基本骨格に迫ることができた。 フィリピンのスペイン語クレオール語については,分担者の荻原がフィリピンに出張し,マニラ近郊のCavite Cityで現地調査を行った。調査目的は,調査に必要な人脈の再構築と調査地点の変化に関する情報収集である。過去の現地調査で協力してくれた故人の家族から,Cavite Cityや,やや遠隔のカビテ語に近いクレオールが行われているTernateでの調査の準備を行った。また,この分野の専門的研究者であるEscalante博士のカビテ語文献を,収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究の当初年度で,それぞれ計画した各分野について着手的研究調査を構想したが,実際には各分野において,予定以上の進展を見ることが出来た.マカオとマレーシア地域のポルトガル語並びにポルトガル語クレオール語については,現地言語運動家や研究者との連携が進んでいるし,文献調査によるデータ化,コーパス化の作業も着々と進んでおり,これまでとは異なった視点からの言語分析の可能性が見えつつある.マレーシア英語や,ベトナムにおける欧州語との接触,影響関係についてもそれなりの情報収集が行われており,研究の進展は順調である.フィリピンについては,研究分担者の荻原の専門領域であるが,今回の調査を通じて,現地における状況の変化なども明らかになり,さらに以前には調査されなかった言語の調査も予定されており,新たな発見や知見の可能性が見えてきている.以上が,本年度の実績を評価した理由である.
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今後の研究の推進方策 |
マカオのポルトガル語並びにマレーシアのポルトガル語クレオール語については,昨年度に引き続き,マレーシア・マラッカ周辺でのKristang語の社会文化的コンテクストを調査する.マレーシアおよびマカオのポルトガル語系クレオール話者および研究者との情報交換および研究動向の把握に努めるとともに,本科研のWebsiteの構築,ブログなどの情報交換のプラットフォームの形成をする. マレーシアの英語及びマレー語の接触や影響などに関しては,さらに社会言語学的な文献調査とともに,音韻や文法など言語特徴に関する先行研究にもあたり,類似するとされるシンガポール英語との相違に注目する研究を展開する.ほとんどが華人の都市国家であるシンガポールに比べ,マレーシアは人口構成がより多様で,国土も広く,現地の英語変種にもより多様性が見られるはずである.可能であれば,先行研究の記述を実際のデータと照らし合わせて検証したい. ベトナム語への欧州語の影響というテーマでは,昨年に引き続き,ベトナム語を語彙レベルで丹念に精査し,特に,75年のサイゴン陥落以前に刊行されていた研究書や資料のデータに基づき中間報告を取りまとめる. フィリピンのスペイン語クレオール語については,5月中旬ないし下旬にCavite CityとTernateにおいて,カビテ語およびテルナテ語の母語話者を集めて,発話データを録音収集する予定である.カビテ語およびテルナテ語に,公用語である英語がどの程度まで影響を与えているかを調査するため,分野ごとにテーマを決めて自由に会話してもらう.帰国後,収集した発話データを文字に起こし,英語の影響が①語彙,②形態,③統語においてどの程度認められるかを分析する.ことに上層言語であるスペイン語との交代に注目する.
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目は,次年度以降への端緒的位置づけの年度であり,出張調査等は十分遂行され,特に不可欠の物件等もなかったので,特に清算処理は行わなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
物件,消耗品,旅費等の費目として使用する.
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