研究課題
ソグド人は現在のウズベク共和国のサマルカンドを中心にした地域に居住していたイラン系の民族で,彼らが話すソグド語は印欧語族インド・イラン語派のイラン語支に属する.ソグド語は中央アジアがイスラム化する西暦10世紀頃まで話されていたが,その後民族は自身の言語を失いこの地域はペルシア語化し,さらにその後トルコ系のウズベク語が話されるようになった.ソグド人はイスラム化以前,シルクロードの交易の民として活躍し,中国や北アジアにもその足跡を残している.ソグド語の研究は,中国の敦煌とトルファンで出土する,紙に書かれた経典類をもとに行われてきている.しかしわずかではあるが,紙以外の媒体に記された所謂金石文もわずかながら残されている.これらは言語資料としては零細でありながら,出土する地域は分散しており,それらが書かれた時代もさまざまである.ほとんどのものは風化など経年による銘文の劣化が著しく解読は困難を極める.ただ,これら金石文が持つ歴史的な情報は極めて重要で,一々の銘文の解読だけでなく,全体像の把握もまたイスラム化以前の中央アジアの歴史を考える上では重要な意味を持つ.本研究費を申請した所以である.3年間の申請期間のうちに2度キルギス共和国を訪問し,金石文の調査を行った.現地で発掘される陶片文書の解読や,タラス河に注ぐ支流の谷にある岩壁銘文の調査を行った.これらの現地調査以外に,出土するコインの写真の提供を受け,その銘文を解読して,ソグド語圏のなかでコインを発行した支配民族や発行の時代などの歴史的背景の考察を行った.さらに,京都大学が戦前に入手した拓本等を用いて,モンゴル高原で発見されたソグド語碑文の解読作業を現在も続けている.また中国の研究者から,中国新疆ウイグル自治区のクチャ地区の千仏洞で発見されたソグド語の落書き類の写真を提供され,一応の解読を終えた.
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