研究課題/領域番号 |
15K02521
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
恒川 元行 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (70197747)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コロケーション / 日常生活語彙 / 名詞 / 日独対照 / 表現データベース |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績は、次の3点にまとめることができる: ■ドイツ語コロケーション辞典の記述内容の検証 ドイツ語には現時点で2冊のコロケーション辞典(Quasthoff: Woerterbuch der Kollokationen im Deutschen, 2011; Buhofer et al.: Feste Wortverbindungen des Deutschen, 2014)がある。その記述内容を検証するため、一部の名詞見出し語について、DWDSドイツ語コーパス(ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー)のデータも加えて比較対照し分析を行った。その際、コロケーションに関わる可能性のある要因として指摘(Moehring 2011)のある頻度の高さ(低さ)にも注目した。以上は、九州大学言語文化研究院「言文論究」および三重大学教養教育研究紀要に研究報告として発表した。 ■強意複合名詞についての口頭発表 複合語の第1成分と第2成分の関係は、基礎語と他の語のコロケーションに並行する関係と捉えることができる。このため昨年度より複合語も本研究の研究対象に含めている。特に第1成分が第2成分の「強意」の働きを持つ強意複合語に注目し、そのうちの特に名詞について、関連する強意複合形容詞と対比しつつ、アクセントおよび意味の観点から考察を行った。(日本独文学会西日本支部、11月26日、山口大学) ■研究データ・資料の充実 DWDSドイツ語コーパス(上述)などのデータとの比較対照をより容易に実施し、コロケーション・データベースの土台とする目的で、コロケーション辞典Buhofer et al.(2014)のデータの一部を電子化した。また、日本では入手ができなかった研究資料を、ドイツ・バイエルン州立図書館で入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度前半には、おもにドイツ語コロケーション辞典の記述内容の検証を行い、その成果を九州大学言語文化研究院「言文論究」および三重大学教養教育研究紀要に研究報告として発表することができた。29年度後半には、強意複合名詞についての口頭発表(日本独文学会西日本支部、11月26日、山口大学)、および研究データ・資料の充実(コロケーション・データの電子化、ドイツでの文献収集)を行うことができた。したがって、健康上の理由から生じたこれまでの遅れの一部を取り戻し、おおむね順調に研究を進めることができたと認められる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、以下の3点を課題としている: ■コロケーション研究の再検討 コロケーションをどのように記述すれば有益であるのかを考え直すため、これまでの研究から得られた経験と知見を、理論(先行研究)と実践(データベースの作成)の両面から再検討する。 ■コロケーション・データベースの作成 コロケーションをどのように記述すれば有益であるのかを考えるためには、実際にコロケーション・データベースの作成(当初目的)が不可欠である。データベース化されたコロケーションは、批判や検証の手がかりとしても重要である。 ■コロケーションの観点からの複合語の考察 コロケーションと複合語の関係の考察を、特に「強意」という意味関係に注目しつつ、先行研究を踏まえて継続・前進させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はおおむね順調に研究を進めることができたが、今年度分の研究費の範囲を大幅に超えることは難しく、27~28年度に健康上の理由から生じた残額がほぼそのまま引き継がれることになった。 (使用計画)次年度の研究計画(コロケーション記述の見直し、コロケーション・データベースの作成、コロケーションの観点からの複合語の考察)を着実に進展させるために使用する。
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